Tanz der Vampire観劇記(2011年4月28日、29日)

Wien(ウィーン)再演版”Tanz der Vampire”、Thomas Borchert伯爵時代には4回見に行ったにも関わらず、ことごとく振られてしまいましたが、今回は念願叶って2日間にわたりDrew SarichのGraf von Krolockを堪能することが出来ました。他のメインキャストはMarjan Shaki(Sarah)、Lukas Perman(Alfred)、Rebecca(Katharina Dorian)、Magda(Melanie Ortner)、Thomas Weissengruber(Koukol)が両日共に出演。ファーストキャストのGernot Kranner(Professor Abronsius、4月28日出演)、James Sbano(Chagal、29日)、Marc Liebisch(Herbert、28日)の代わりを務めたのはMartin Planz(Professor Abronsius、29日)、Fernand Delosch(Chagal、28日)、Florian Theiler(Herbert、29日)でした。

最初にDrewの歌声を聴いた印象は、「あ、高い!」。低音ヴォイスで渋く聴かせる伯爵達とは違う明るく若々しいタイプの声で、普通なら低く落とす箇所を逆に高く歌ったりと、初めて聴くと驚かされるところも多々ありましたが、次第にDrew独自の世界観に引き込まれました。クリアに発音される一つ一つの歌詞に、クールな存在である吸血鬼であるにも関わらず、溢れんばかりの感情が込められており、Drewが歌っている間は自然と目が吸い寄せられてしまいました。とにかくオーラが凄い! 彼が舞台上にいる間は、LukasやMarjanに目移りする暇もないほどでした(笑)。ねっとりとからみつくような歌い方や、蜘蛛の糸を操るようにSarahの背後でなまめかしく動く長い爪には、独特のエロティシズムが感じられました。これはSarahがついていってしまうのも無理ないです(笑)。一方で教授とAlfredを驚かすコミカルな部分では、なかなかお茶目な表情を見せてくれるDrew。”Die unstillbare Gier”(抑えがたい欲望)は、Vereinigte Bühnen Wien(VBW、ウィーン劇場協会)のYouTube公式チャンネルRonacher09で聴いていましたが、過去の犠牲者との思い出に耽るように、一つ一つの墓を覗き込むように見つめながら歌う姿に、何とも言えない情感が溢れていました。その後の舞踏会の場面では、居並ぶ吸血鬼達の上に立つカリスマ性に満ち、Sarahの血を得て歓喜する姿は墓場で見せた顔とは別人のようでした。

全体としては、”Rudolf”で見せた悩める貴公子の上品さと、ロックバンドのボーカリストのワイルドさというDrew自身が持つ多面性が、独特な伯爵像を作り上げていると感じました。”Tanz der Vampire”は、伯爵次第で大きく印象が変わる作品だと改めて思う次第です。

Lukasは情けなく押されっぱなしのAlfred役と、相変わらずの華麗なルックス&長身とのギャップがすっかりはまっています。風呂場から鍵穴を通してSarahの部屋を覗き見る様子を、後ろからしっかりSarahに見られているシーンは、何度見ても笑えます(笑)。教授に吸血鬼退治を命じられるところといい、Herbertに襲われるところといい、悲惨な目に遭っているシーンがツボです。

ハイチ訪問から帰ったばかりのMarjanはお疲れなのか、”Totale Finsternis”の早口の歌詞が遅れたり、やや声に元気がないような気もしましたが、Alfredを手玉にとってバスルームを奪還したり、彼に血の味を教える口調に窺える魔女ぶりは健在でした。

Gernot KrannerのProfessor Abronsiusはいつ見ても安定している分、セカンドのMartin Planzはどうなのかなと思いましたが、全く違和感ない台詞回しとコミカルな演技にびっくり! 早口の台詞も全く遅れず、難なくこなしておりました。パンフレットの写真は金髪髭面のなかなかのイケメンで、本当にこの人が教授をやっていたのかとまじまじと見てしまいました。ChagalのセカンドのFernand Delosch、まさかHamburg(ハンブルク)の”MOZART!”でWolfgangのセカンド(サードだったでしょうか?)で見たガリガリの彼を、Chagal役で見るとは思いませんでした。教授役のセカンドもしているようなので、Chagalの肉襦袢は本物ではないと思いたいです(苦笑)。

MagdaのMelanie Ortnerは、今シーズンからのファーストキャスト。歌はもうちょっとドスが効いていてもいいかなと思いましたが、吸血鬼化した後、ふてぶてしい態度でChagalをやりこめる姿は、往年のスケバン(笑)のようでなかなかはまっていました。プラチナブロンドの長髪をなびかせ、貴公子然とした佇まいで女子好きのするMarc Liebischとは対照的に、プラチナブロンドの短髪を勢いよくたたせたHerbertセカンドのFlorian Theilerは、学ランが似合いそうなヤンキー系(笑)。Alfredにとってはどちらに襲われても嬉しくないでしょうが、見物する方としてはやはりMarcの手慣れた(?)流し目や怪しげな身のこなしにびくびくするAlfredの様子が面白かったです。Rebecca役のKatharina Dorianはわりとキンキンした声で、この役はもうちょっとおおらかでふっくらした感じの役者さんで見たいなと思いました。Thomas WeissengruberのKoukolで何と言っても印象的なのは、悪夢のシーンの後、Koukolがワゴンで運んできた朝食をAlfredが見つけ「Sarahが運んできたのかもしれない!」と喜ぶ姿を見てむっとし、Alfredの目の前で皿にツバを吐いてプンプン怒りながら去っていくところ。ヤキモチを焼いているようで可愛くないですか(笑)?

Drew伯爵の世界にどっぷりと浸って迎えたラスト、危うく噂のフライングシーンを忘れるところでした。降りしきる雪の中、AlfredとSarahがいないことに気がついた教授が二人を探して姿を消した後、再びKrolockが舞台に姿を現します。フライングは最後の最後、舞台上の伯爵をしっかり見ていないと見逃すくらい、あっという間の出来事です。特に前方列の場合、見る前に目の前から飛び去ってしまうかもしれませんのでご注意下さいませ!

“Making of” Vampirflug im Ronacher bei TANZ DER VAMPIRE in Wien

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