Elisabethツアー公演 in Bremen観劇記(2012年3月)

2011年10月から2012年4月にかけてドイツ・スイスを回る”Elisabeth”ツアー公演。2012年3月9日及び10日に、ドイツ北部の都市Bremen(ブレーメン)にて観劇しました。

ツアー公演自体は、2008年7月にBerlin(ベルリン)でUwe KrögerのDer Tod及びAlice MacuraのElisabethで観ていましたが、ツアー公演のElisabeth役としてお馴染みのAnnemieke van Damは今回が初見。まだ29歳と若いこともあり、1幕は外見的に納得できるフレッシュなElisabethでした。パパとじゃれあうところはなかなか可愛かったです。ただ残念ながら高音が出ず、裏声にすべきところを無理矢理地声で歌っているため、特に一番の聴かせどころのはずの”Ich gehör nur mir”は、聴くのが辛いほどでした。噂では病気をしたそうなので、たまたま私が観た回だけのことであって欲しいのですが・・・。Pia Douwes、Maya Hakvoortのようなカリスマ性もないと思いました。

Der TodのMark Seibertは今回一番観てみたかったキャスト。ロック調のDer Todは、Máté Kamarásの路線に似ていました。見た目も格好いいし、十分上手いのですが、同じ方向性となるとやはり長年演じているMátéに比べて物足りなさが目につきました。ただもっと演じればまだ発展する可能性はあるのではと思わされました。白と黒の衣装はほぼ同じデザイン、長めのジャケットとシャツ、パンツという出で立ちでやや野暮ったく、もう少し何とかならないかなあと思ってしまいました。”Der letzte Tanz”の途中、Elisabethに向かって膝をついて滑り込むところで、膝とブーツの間にうっすら肌の線が現れるハプニングが! 長ズボンだと思っていたのは短パンだったのでしょうか・・・。真面目な場面なのに、笑いそうになってしまったいけない私でした(苦笑)。次の場面からは直っていて良かったです。最後にElisabethにキスする場面、かぶりつきそうな勢いだったのがこれまたちょっとおかしかったです(笑)。それにしてもAnnemiekeとMarkのコンビにあまり愛が感じられなかったのは、私だけでしょうか? 一番愛を感じたのは、二人の最初の出会い、ベッドの上から差しのばしたElisabethの腕を取ったDer Todが、彼女の肘から手首にかけて手を這わせつつ名残惜しそうに離すところでした・・・。

Luigi Lucheni役のKurosch Abbasiは、2011年に学業を追えたばかりの新鋭。Wien(ウィーン)再演版のLucheni、Serkan Kayaを思い出す演技でした。好みの問題だとは思うのですが、私にとっては苦手なタイプのLucheniでした。初期の”Elisabeth”でLucheni役だったEthan FreemanやThomas Borchert、Bruno Grassiniの演技には、何処か知性が感じられたものですが、Serkan以降のLucheniは怒鳴り声が下品なチンピラという感じがしてしまい、ファンの方には申し訳ないのですが、どうも受け入れがたいのです。

Franz Josephはツアー公演の最初からファーストを務めていたMathias Edenbornがコンサートツアー出演のため、Bremen公演以降は降板に。2011年夏に”Die Päpstin”を観た時も怪我で休演中だったので、2回連続見逃してしまいました。観劇1日目はLars Rindelaub、2日目はMartin Planzが皇帝役でした。Lars Rindelaubは声が良かったです。2日目はKardinal Rauscher役で出演していました。Kronprinz Rudolfは1日目がファーストのOliver Arno、2日目がセカンドのMartin Markertでした。Martin Markertは来日公演でもLukas Permanの代わりにRudolfを演じたことがありました。Oliver Arnoは今までのツアー公演ではDer Todのファースト、Uweが特別ゲストで出演した際はRudolfを演じており、Wien再演版で当初Rudolf役だったJesper Tydénを彷彿とさせる爽やかなイケメン青年。歌もなかなか良くて素敵でした! Der Todでも観てみたかったです。Martin MarkertのRudolfは骨太で体格が良く、Mark Seibertとの”Die Schatten werden länger”はマッチョなイメージが(笑)。

Erzherzogin SophieのBetty Vermeulenは役柄のイメージからするとやや痩せすぎで、重みに欠けました。Herzogin Ludovika/Frau WolfのElissa Huberはなかなか肉感的。Frau Wolfの青と赤の縦縞のドレスが強烈でした。Herzog MaxのDennis Kozeluhは来日公演でもMaxを演じていたので、お馴染みの方も多いでしょう。久々に観て、さすがに年を取ったなあと思ってしまいました。昔は若いのに年配の役をやっているイメージがありましたが、いつの間にか年相応になっていました。来日メンバーといえば、Graf GrünneのMartin Paschingもそうでした。ちょこちょこ動き回り、コミカルにオーバーアクションな演技で、妙に目立つGraf Grünneでした(笑)。子役RudolfはFynnとDenisのBöse兄弟。Hamburg(ハンブルク)の”Tarzan”にも出演したことがあるそうです。1日目は21時開演でしたがカーテンコールにも登場し、大きな拍手を貰っていました。

大道具はやすりや双頭の鷲の巨大なオブジェ、ゴンドラに1幕ラストの鏡等最低限に留められ、映像が多用される作り。ツアー公演なので仕方がないですが、その分どうしても重厚感に欠け、チープに見えてしまいました。Der Todと子役Rudolfの場面で登場する馬車は、巨大なレンゲを思わせる貝の舟(?)のようなセットに変更。こうした仕様を見ると、Wien版を極力再現した梅田芸術劇場での公演が、如何に素晴らしかったかが改めて分かります。

1日目は平日だったからか、はたまた21時開演だったせいか、1階席は半分ほどしか埋まっていませんでした。2日目は土曜夜だったため、打って変わってかなりの盛況。ロビーの混雑度合いも前日とは全然違いました。土曜の昼公演は観なかったのですが、どうも電気系統の故障で回り舞台が使えず、公演が一時中断したようです。幸い夜公演には支障ありませんでした。ラストはDer Todの口づけを受けたElisabethが地面に倒れたところを、盆が回転して舞台奥にそのまま運ばれていく演出なので、盆が動かないとかなりまずいところでした。

Booking.com

9 Comments

  1. spaさん、こんばんは。
    2ヶ月ほど前にコメントさせていただきましたkonと申します。
    ご旅行先での観劇記、楽しく読ませていただきました。
    ドイツ語はおろか英語もままならない自分としては
    読みやすく詳細な記事をいつもアップしていただけて嬉しく思います。

    Oliver Arnoさんは動画で拝見したことがある程度なのですが
    神秘的なDer Todを演じられていて気になっていました。
    現在ツアーをされているキャストさんは、9月からの
    Wien公演にそのまま出演されたりするものなのでしょうか?

    私事で恐縮ですが、つい先日初の海外観劇をしました。
    ドイツ語圏ではなく、ロンドンでですが…。
    海外ミュージカルのレベルの高さに本当に驚きました。
    spaさんの記事を読みつつ、ますます本場ドイツ語圏で
    ミュージカルを観たくなりました。
    また度々訪問させていただきます。長文失礼いたしました。

  2. konさん、再訪ありがとうございます。ロンドンでの初海外観劇、演目は何をご覧になりましたか? 私はロンドンでの観劇は、その昔Uwe Krögerが出演した"Napoleon"だけですが、いつか機会があればまた行ってみたいものです。

    私のつたない観劇記で少しでもドイツ語圏ミュージカルへの興味を持って頂けたなら嬉しいです。気になる9月からのウィーン版公演キャストですが、なかなか興味深い噂が流れています。非公式な話なので詳細は控えますが、現ツアーのキャストでウィーンと来日公演に横滑りする人がいるようですよ!

  3. spaさん、コメントありがとうございます。
    ロンドンではLes Miserables、The Phantom of the Opera、Wickedという超王道でした。
    日本よりもずっとミュージカルが人々に浸透している感があり
    羨ましくなりました。

    現ツアーのキャストでウィーンと来日公演に横滑り…
    10月のElisabethのコンサートは何度か行こうと思っていましたが
    更に買い足しすることになるかもしれません。お金が…(笑)
    楽しみが増えました。気になる情報ありがとうございます!
    夜分遅くに失礼いたしました。

  4. こんにちは。連日の投稿失礼致します。また、前回は長文で大変失礼いたしました。spaさんに聞いていただきたくて長くなってしまいましたが、以後、気をつけます。
    ところでAnnemieke van Dam版の"Elisabeth"のCDはご購入されましたか?今回のご旅行でご購入されたCDの感想なども、お暇なときにでも、是非伺わせてください。
    "Marjan & Lukas"もよさそうですよね。
    spaさんのコメントを読んで、"chess"のDVD買ってしまった私です。

  5. konさん、海外での観劇は王道から入った方が、話を知っているだけに、より楽しめると思います。"Les Miserables"と"The Phantom of the Opera"は最近立て続けに上映された記念コンサート版がとても良かったので、いつかロンドンで見てみたいものです。

    "Elisabeth"で来日するのはメインキャストとは限りませんが、誰が来るのか楽しみですね。私も今から貯金に励まないと(笑)。ウィーン行きの資金も考えないと!

  6. 里絵さん、長文歓迎なのでいつでもコメント下さいね。

    Annemieke van Dam版の"Elisabeth"CDは入手してざっと聴きました。今回のツアーのライブ収録なので、Annemiekeの高音が今ひとつなのは観劇時に思った通りでした。あとはオーケストラの音が薄く感じられました。ツアーなので、ウィーンのオケのレベルは期待出来ないですね。今回他に買ったのは、"Best of Musical Gala 2012"の会場で2枚で18 EURになっていた過去の"Best of Musical"のCDです。今回のツアーのCD、是非とも出して欲しいものです! Marjan & LukasのCDは、次回ウィーンに行った時にでもと考えているところです。

    "Chess"のDVDは如何でしたか? ドイツのChessファンの友人が、先日ヘルシンキで行われたBjörnとBennyの第3のミュージカル"Kristina"の初日に行ってきたそうです。スウェーデンから米国に移民した家族の物語だそうで、私もカーネギーホールで行われたコンサート版のCDを入手しました。所々"Chess"を思わせるメロディーがあり、映像が見たいと思いました。

  7. お久しぶりです。
    詳しいレポートですね。
    読ませて頂きました。

    私が2004年に Wien の Theatre an der Wien で
    観た再演版では、
    エリザベート:Maya Hakvoort
    トート:Máté Kamarás
    ルケーニ:Serkan Kaya
    でした。
    フランツヨーゼフは、何か年配のおじさんに見える人で、役柄に似つかわしくない感じでしたが名前は???
    Máté Kamarás は、今年、博多座で再再演される「エリザベート」でルケーニを演じることになっています。見に行くつもり。
    エリザベートは、元・宝塚男役TOPの瀬奈じゅん と 春野寿美礼のWキャスト。
    二人とも花組でTOPを張った人で、春野寿美礼(愛称・オサ)がTOP、瀬奈じゅん(愛称・アサコ)がSecondに就任した時に、(オサアサ・コンビと言われていた)Top御披露目公演【あおによし紫の華】(だったか?)を、宝塚劇場よりも前に博多座で行なった、二人にとっても『思い出』の劇場です。
    オサがトートを演った時にアサはルケーニを演り、次にアサがトートをやり、花組Top就任直前にアサは今度はエリザベートを演じました。
    瀬奈じゅんさんは、一路真輝を上回り、宝塚在籍中に、ルケーニ・トート・エリザベートの3役を演じた逸材です!
    と、瀬奈じゅん大好きなファンの一言でした。

    今後ともよろしく御願い致します。

    • 初めてブログを拝見してます。
      驚くほど間違いだらけのコメントを読んで思わず返信してます。
      マテがルキーニをするとか、春野さんのトップお披露目公演のタイトルとか。また瀬奈さんが花組のトップだったとか、瀬奈さんがエリザで演じた役の順とか。
      でたらめだらけですね。

  8. JUNSKYさん、再訪ありがとうございました。"Elisabeth"、Theater an der Wienでご覧になったのですね。2004年であれば、Franz JosephはAndré Bauerがファーストキャストでしたが、ご覧になった回は違う人がやっていたのかもしれませんね。

    瀬奈じゅんさんのエリザベートは宝塚で観ました。男役さんが演じるエリザベートだけあって、どこか雄々しい皇妃だと思いました。瀬奈さんは『三銃士』のミレディや『ニューヨークに行きたい』のリサがはまっていました。『三銃士』は博多座でもやっていたので、ご覧になったことと思います。

    話は変わりますが、『ハムレット』で初めて平田愛咲さんの舞台を拝見しました。大変魅力的な声で、将来がとても楽しみだと思いました。Frank Wildhornのレッスンも受けられたそうですね。Wildhorn作品への出演も期待しています。

spa へ返信する コメントをキャンセル

Your email address will not be published.




このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください