Rebecca in St. Gallen

観劇の旅の最後を締めくくるのは、St. Gallen(ザンクト・ガレン)の”Rebecca”。こちらのMrs. Danversは今秋の”Elisabeth”来日公演参加が決まっているMaya Hakvoortです。

以前Wien(ウィーン)のプロダクションで同役をオファーされたときは、悪意に満ちたキャラクターは自分には合わないからと断わったそうですが、Mayaさんならではの熱いMrs. Danversに心を掴まれました! Rebeccaに恋愛感情を抱いているのではと思わせる妖艶さを見せるPia夫人に対し、Maya夫人はRebeccaを自分の女神のように崇め、その女神の座を汚す存在は自分の手で消し去ってやるという闘争心を感じました。Ich(私)に初めて会ったときから、身体に溜まったマグマが毛穴から吹き出しそうな感情を隠しきれないMaya夫人、冷たい石のような人物がMrs. Danversだと思っていましたが、こういう解釈もありだと思わせてくれたのはさすがです!

IchのLisa AntoniはWien版”Rudolf”のMary。Stuttgart(シュトゥットガルト)と比べると美人過ぎるIch(笑)。彼女自身が気が強そうなので、キャラクター的にはややミスマッチかとは思いましたが、演技はさすがに上手です。MaximはStuttgartと同じThomas Borchert。演技的にはどちらのプロダクションでも変わらないように思いました。Maximのソロ”Zauberhaft natürlich”は、Stuttgartでは新婚旅行の場面で歌われていました。Maximが歌っている間、Ichは街角で似顔絵を描いてもらっています。St. Gallenでは東宝版同様、山の上でIchがスケッチする場面の曲となります。 個人的には山上のデートで早々と心情を吐露するのMaximには違和感があったので、この歌には新婚旅行の場面の方が合っていると思いました。Frank役のAndre BauerはWienでも同役で出演していました。以前ウィーンミュージカルコンサートで来日したので、ご存知の方も多いでしょう。StuttgartのFrankが正直物足りなかったので、Andreの声を聞くことが出来て安心しました。

両バージョンは監督は同じですが、演出上左右が逆になる箇所が幾つかあり、ちょっと不思議な感じがしました。 MaximとIchがチェスをする場面での椅子に座る位置や、ボート小屋の階段の位置が逆になっていたりと、両方のプロダクションに出ている役者さんが混乱しないか心配になりました(笑)。

舞台装置はやはりロングラン公演のStuttgart版に比べると、一回り豪華さが縮小されている感はありましたが、逆にStuttgartを知らなければこれで十分豪華と思えるレベル。挿入される映像には、Stuttgartで見た覚えがあるものも。IchとMrs. Danversが海に面したベランダで歌う”Rebecca”の場面では、Stuttgartのように半円形のセットが回りこんでくる代わりに、歌の途中で下手からベランダのセットが現れました。クライマックスではさすがに階段自体が燃えさかるStuttgart版の再現はありませんでしたが、Mrs. Danversが持つトーチの火は本物で、場面冒頭の真っ赤なライティングや炎の映像と相まって、見応えがありました。

St. Gallenのオーケストラは45人ものメンバーからなっているそうで、弦だけでも20人いるそうです。 Stuttgartと比べて音に厚みがあることが、最初から明らかに分かりました。ドイツ語圏ミュージカルでも昨今はオケの人数を削る傾向がありますが、ドイツの友人曰くスイスはまだ大丈夫だとか(笑)。Stuttgartと比べるとテンポが全体的に速く、特に歌はそんなに飛ばしてもいいの!?と思ってしまうくらいのスピードでした。指揮のKoen Schoots氏はVereinigte Bühnen Wien(VBW、ウィーン劇場協会)のオーケストラを率いている人です。

この日の公演 にもハプニングが。2幕が始まる前に舞台に登場した劇場関係者から、吊り物の昇降装置に異常が発生したので、2幕開始が20〜30分遅れるとのアナウンスがあり、一旦ロビーに出る羽目に。幸い10分程で再入場を促すチャイムが流れ、無事最後まで観劇出来ました。

上演回数が少ないので、一度しか観ることが出来ませんでしたが、MayaさんのMrs. Danvers、再び観たいものです!

パンフレットは7スイスフラン。余談ですが、以前は7スイスフランもしくは5 EURと併記してあり、ユーロでの支払いも可能でしたが、スイスフラン高の影響か、今回はスイスフランのみ受け付けるとのことでした。ユーロ圏からの観光客が多い土地柄か、街中の飲食店のレシートは2通貨併記で、どちらでも支払い可でしたが、劇場やスーパーでの支払いを考えると、スイスフランの現金を少し用意しておくことをお勧めします。

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4 Comments

  1. Rebeccaのレポートをありがとうございます。夏にMAとRebeccaを見に行きたいと思っているのでぼちぼち真剣に情報集めをしないといけないかなと考えています。が、なにぶん、ツアーでない旅行なんて久しぶりだし、英語圏でないので全く勝手がわからずどこから手をつけたらよいやら。Tecklenburgはとても不便そうだし。チケットは多少高くても日本の代理店のようなところで買うほうが確実でしょうか。日本のように数ヶ月前に買わないと売り切れになってしまうのでしょうか?でも、あまりここで質問してもいけませんね。

  2. エムさん、お久しぶりです。夏のMAとRebecca観劇、Kunze & Levay作品を一度に観られるチャンスですね。Tecklenburgのチケットはオンラインでも購入可能ですが、ドイツ国外への送料が高いのが難点です。友人は劇場に直接メールして、チケットを押さえて貰ったそうです。実はオンライン販売より劇場で直接買う方がチケット代も安いのです。英語でも大丈夫だと思うので、一度問い合わせて見られてはいかがでしょうか。

    席数はかなりありますが、あまりぎりぎりになると日によっては残席がかなり少なくなることもあります。劇場公式サイトからリンクしているオンラインチケット販売サイトでは、座席表で残席状況が確認出来ますよ。英語画面もあります。以下のリンクから"Tickets für Marie Antoinette online kaufen"をクリックして見て下さい。今のところどの日程も残席があるようです。

    http://www.buehne-tecklenburg.de/tickets-online-kaufen.html

  3. spaさま ご丁寧なお返事をありがとうございます。今気がついたのですが、waiwaiさんへのお答えもとても参考になりました!この夏は日本で満たされない思いのMAファンが大挙してTecklenburgに集結したりして・・・。先日のウィーンミュージカルコンサートでMAのナマの歌を数年ぶりに聴いて思いが一気に募っています。またいろいろと教えてください。

  4. エムさん、Tecklenburg情報、参考になれば何よりです。Tecklenburgについては、そのうちまとめて書こうと思っていたのですが、ついつい先延ばしになってしまっていました。ウィーンミュージカルコンサート、私も久々にMAを聴いて感動しました! 新妻さんのマルグリットも是非また観たいです。

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