Der Besuch der alten Dame観劇記(2013年8月)

スイス・Thun(トゥーン)の湖上舞台で”Der Besuch der alten Dame”(老貴婦人の訪問)を観劇しました。自分を裏切った元恋人に復讐するために生まれ故郷に帰って来た大金持ちの女性が、元恋人の死を条件に町に巨額の財政支援を約束するという物語は、サスペンスとしても心理劇としても大変面白く、休憩なしの2時間の上演があっという間に感じられるほど見応えがありました。

話題となった”Elisabeth”のPia DouwesとUwe Krögerの共演はさすが息がぴったり。今でも彼を愛する気持ちがありながら、復讐を強く望む女性の揺れる心を、時に力強く冷酷に、時に繊細に甘く歌い上げるPia、彼女の歴史に新たな1ページを加える素晴らしい役に巡り合ったと思いました。白髪に白か黒のパンツスーツを身につけ、少し足が不自由なために杖をついてはいるものの、足元は常に黒のハイヒール。彼女が舞台に登場すると、一気に目が惹きつけられました。
自身の死が巨万の富をもたらすことを知った町の人々に、命を狙われているのではないかと疑心暗鬼になり、次第に追い詰められて行く元恋人役のUweは、髪を振り乱して舞台上を走り回る大熱演。町の人々に人気があり、次期市長とも目された善良な商店主が、かつて捨てた女性の復讐心を前に、一度は命惜しさに家族を捨てて逃げようとするも、結局は財産目当ての結婚をした過ちを認め、今も愛していることに気づいた彼女の望みを受け入れる境地に至るまでを、体当たりの演技で見せてくれました。今までのUweとは一味違う小市民の役ですが、Uweの演技力の素晴らしさがたっぷり味わえる、大変興味深い役柄でした。
ポスターに登場している黒豹は、帰って来た女性が飼っており、物語の途中で逃げ出したため、町中の人々が銃で武装し、猛獣狩りが行われるという一幕があります。かつて恋人同士だった二人は、お互いをブラックパンサー、ワイルドキャットと呼び合っていた過去があり、黒豹狩りは元恋人に心理的な圧迫感を与えます。結局黒豹は射殺され、女性がその死を悼むというくだりは、元恋人の運命を暗示しているかのようでした。
音楽も大変ドラマチックで、迫力あるコーラスが物語に重厚感を付け加えていました。湖上舞台だけあって、水を利用した演出があり、キャストの大半は長靴着用。舞踏会の場面でもドレスの下は長靴でした。舞台装置はモノポリーの盤面に似た床面に、白いパイプ状の構造物と巨大なサイコロが置かれたもので、背後には湖と山並みが見えました。
バックステージツアーにも参加し、舞台下のオーケストラボックスや楽屋などを垣間見ることが出来ました。
“Der Besuch der alten Dame”は2014年2月からWien(ウィーン)のRonacherでも上演されます。衣装の一部はWienでも使われるそうです。PiaとUweのコンビもそのまま移ることになっています。素晴らしい新作、是非観て下さい!

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