Der Graf von Monte Christo観劇記(2014年6月)

2014年6月、ドイツ南部・Romantische Straße(ロマンティック街道)沿いの小都市Röttingen(レッティンゲン)にある古城Burg Brattensteinを舞台に開催された野外演劇祭Frankenfestspiele Röttingenにて、”Der Graf von Monte Christo”(モンテ・クリスト伯)を初日から4日間連続観劇してきました。しばらく時間が経ってしまいましたが、公演レポートをお送りします。

“Der Graf von Monte Christo”は、スイス・St. Gallen(ザンクト・ガレン)で2009年3月にThomas Borchert主演で世界初演されました。子供の頃に波瀾万丈の物語に憧れたモンテ・クリスト伯がミュージカルになると聞いていてもたってもいられず、2009年11月に初めてのスイス観劇となるTheater St. Gallenへの遠征を決行しました。当時の観劇記へのリンクはこちら。

Der Graf von Monte Christo 第1幕 Part 1

Der Graf von Monte Christo 第1幕 Part 2

Der Graf von Monte Christo 第2幕 Part 1

Der Graf von Monte Christo 第2幕 Part 2

日本でも2013年12月に日生劇場で日本初演が行われ、石丸幹二さんがエドモン・ダンテス、後のモンテ・クリスト伯を演じました。

それまでの町の名前を冠した”Festspiele Röttingen an der Romantischen Straße”から、2013年にFranken(フランケン)地方全体を視野に入れた”Frankenfestspiele Röttingen”と名を改めた演劇祭は、Wien(ウィーン)を本拠地に活躍しているSascha Oliver BauerとWalter Lochmannを演劇及び音楽ディレクターとして迎え入れました。この二人がRob Fowler、Andreas Bieberといった大物キャストを配して上演したFrank Wildhornの”Dracula”は大評判となり、チケットの売り上げが前年比40%増という大成功を収めました。2014年の”Der Graf von Monte Christo”もYngve Gasoy-Romdal、Ann Mandrella、Leah Delos Santosと豪華な顔ぶれが集まり、今までRöttingenに足を運んだことがなかったというドイツのミュージカルファンの友人達が、こぞって遠征計画を立てていました。私も今回が初めてのRöttingen行きとなりました。

上演会場は中世の城跡Burg Brattenstein。テーブル(Tisch)席とベンチ(Bank)席があり、予約した番号のテーブルまたはベンチでの着席場所は自由です。会場の売店で購入した飲食物は上演中の持ち込みが可能です。テーブル席は全て舞台の方向を向いており、テーブルを背にする列と、テーブルを前に着席する列があります。入口でビート板に似た座席クッションを無料で貸してくれます(一人1枚のみ)。座席は折りたたみ式の椅子なので、背中用のクッションがあった方がいいと思います。屋根があるのは後方の一段高くなったテーブル席だけです。雨天の場合は屋内会場での上演になることもあるそうですが、少々降ったくらいでは雨のうちに入らないのがドイツの野外公演。当然のことながら傘は使用禁止なので、レインコートは必須です。私が観劇した4公演のうち、2回は途中から雨が降ってきました。地面は砂利なので、荷物を置くのにビニールシートや音がしないタイプのゴミ袋があると便利です。開場19:30、開演20:30、途中休憩が20分ほどありました。終演時間は公式には23:15となっていましたが、開演が少し遅れた初日は23:05頃終了、その後毎回どんどん早くなり、22:50に終わった日もありました。天気が悪いと休憩時間が短めになるようです。トイレは無料、数も割とありました。

初日は開演前に別会場でオープニングセレモニーが開催されました。丁度サッカーワールドカップ・ブラジル大会のグループリーグでドイツ対アメリカの試合が行われた日に当たり、セレモニー中にサッカー中継を見られるよう、当初予定されていた場所から会場をわざわざ移したそうです。幸い開演前にドイツ勝利の結果が判明したので、ゲストのお偉いさん方も気分良く観劇出来たことでしょう。また観客には白バラが配られました。なかなか素敵な趣向です。このバラは滞在中部屋を飾ってくれました。

Der Graf von Monte Christo

キャスト
Edmond Dantès (später: Der Graf von Monte Christo): Yngve Gasoy-Romdal
Mercédès: Ann Mandrella
Fernand Mondego: Martin Berger
Gérard de Villefort: Dennis Kozeluh
Valentine de Villefort: Leah Delos Santos
Baron Danglars: Anton Graner
Abbé Faria: Dennis Kozeluh
Luis(a) Vampa: Kathleen Bauer
Albert Mondego: Max Buchleitner
Jacopo: Katharina Lochmann
Ensemble: Katharina Lochmann, Johanna Kräuter, Kathleen Bauer

Röttingen公演のEdmond Dantès、後のDer Graf von Monte Christo役は、Wien版”MOZART!”のオリジナルWolfgangで、”Wien Musical Concert II”(ウィーン・ミュージカル・コンサート2)で来日したYngve Gasoy-Romdal。同じWildhorn作品の”Jekyll & Hyde”でもタイトルロールを長く演じてきました。

Edmondの恋人Mercédès役のAnn Mandrellaは、Wien(ウィーン)版”Ich war noch niemals in New York”(ニューヨークに行きたい!!)に主人公Lisa Wartberg役で出演していました。2013年夏の旅行では、彼女が主演した”Hallo Dolly!”をオーストリア・Bad Ischl(バート・イシュル)で観劇しました。Annはフランス出身ですが、子供時代をドイツで過ごしたのでドイツ語は完璧です。ドイツ・Hamburg(ハンブルク)の”Rocky – Das Musical”に出演中のDrew Sarichとはおしどり夫婦で有名です。7月にドイツの友人が観劇した際にはDrewと双子の子供達が来ていたそうです。

Mercédèsの従兄でEdmondを陥れるFernand Mondego役のMartin Bergerは、Wienで大ヒットした”Catch Me If You Can”にFBI捜査官Carl Hanratty役で出演していました。検事VillefortとFaria神父の二役を演じるDennis Kozeluhは、2007年の”Elisabeth”来日公演のパパであり、”MOZART!”のGraf Arcoのオリジナルキャスト。Villefortの娘Valentine役のLeah Delos Santosは、アジア系(フィリピン出身)でありながら、ドイツ版”Die Schöne und das Biest”(美女と野獣)のオリジナルBelle役を射止めた素晴らしい美声の持ち主。彼女もYngveと”Jekyll & Hyde”に出演しています。三悪人の一人、男爵Danglars役のAnton Granerはオペラやオペレッタへの出演が多く、WienのVolksoperやBaden(バーデン)のBühne Badenへの出演経験があります。

女海賊Luisa Vampa役のKathleen Bauerは、ディレクターのSascha Oliver Bauerの奥様。”Elisabeth”、”Rebecca”、”Rudolf”等数多くのミュージカルに出演し、近年は振付師としてもキャリアを築いています。本作の振付も彼女が担当しています。Albert Mondego役のMax BuchleitnerはWien出身、オペレッタの勉強をした若手俳優で、今夏のFrankenfestspiele Röttingenでは”Der Graf von Monte Christo”と平行してオペレッタ”Wiener Blut”にも出演しています。Luisa Vampaの手下で、後にEdmondの忠実な部下となるJacopoは元々は男性の役ですが、本公演では女優のKatharina Lochmannが演じています。Katharinaは音楽監督Walter Lochmannの長女で、Röttingenには父親が監督になる前から出演していたそうです。アンサンブルとしてもう一人名前が挙がっているJohanna Kräuterは、”My Fair Lady”や”Joseph”への出演経験があり、冒頭の合唱のソロパートを担当しています。

公演にはこの他にバックダンサーやコーラスを務めるアンサンブル、E-Ensembleが参加しています。「あなたもプロの俳優と一緒に舞台に立ってみませんか?」というコンセプトの下、オーディションを経て選ばれた9人の参加者は、それぞれ仕事を持つ普通の人々。今回の公演に向けて仕事の合間に練習を重ねてきました。

fnweb.deに舞台写真が掲載されています。写真の場面の順番は前後しています。この時期日没は21時以降なので、1幕のうちは明るいですが、2幕に入ると陽が沈み、舞台の雰囲気ががらっと変わります。舞台上手には鉄格子がはまった低い段と舞台手前に向かって斜めに置かれた金属板のスロープがあります。中央奥にはスクリーンがあり、その上方も人が行き来出来るようになっています。下手には牢屋のセットがあり、階段でその上のバルコニーに上れるようになっています。

物語冒頭、主人公を除く主な登場人物達が、無言で次々と舞台上に現れます。St. Gallenでスクリーンに映し出された時代背景の説明は、Röttingenでは予め録音されていた各登場人物の声で次々と語られます。自分の声のアナウンスが終わると一人ずつ舞台を去って行き、最後のMercédèsが姿を消すと、オープニングの音楽が始まります。St. Gallenではフルオーケストラで演奏された音楽は、Röttingenでは6名のバンド用に大幅にアレンジされ、編曲を手がけた音楽監督自身がキーボードを演奏しています。バンドは客席左奥のガラス張りの部屋でライブ演奏をしていることが、公演前のアナウンスで毎回紹介されていました。

コーラスのソロパートを歌う女性が手に持つのは、Edmondの運命を変えることになるナポレオンの手紙。手紙は舞台手前のセリから横一列に観客に背中を向けて登場するMondego、Danglars、Villefortの三悪人の手を経て、Edmondに託されます。波乱に満ちた運命を予感させるコーラスとオーケストラによるオリジナル版の荘厳な幕開けは、エレキギターやドラムによって倍ほどの速いテンポで演奏されました。バンドになって音が減ったことよりもそちらの方にびっくりしましたが、これもありかなと思えました。たとえて言うなら、クラシックをロックやポップス調にアレンジしたような印象を受けました。テンポは作品全体を通じてかなり速めで、スピード感がありました。やはりバンド演奏だった2013年の”Dracula”は、オリジナルの重厚さが失われたと大分酷評されていたのでどうなることかと思っていたのですが、Monte Christoに関しては、既知のメロディーが味付けによってこんなに雰囲気が変わるのかとなかなか面白く聴くことが出来ました。オープニング後の最初のナンバー”Ein Leben lang”(この愛を信じて)が、アカペラで始まったのも新鮮でした。

YngveとAnnが組んだのは今回が初めてだと思いますが、二人ともパワフルボイスで非常に相性が良かったです。”Ein Leben lang”(この愛を信じて)や”Niemals allein”(ただ そばにいる)からは、二人の力強い歌声がお互いの感情を高め合い、頂点へと駆け上がっていく勢いに観客の気持ちも巻き込まれていくような印象を受けました。オリジナルではMercédèsのソロナンバーだった”Wie mich die Welt umarmt”(世界を手にした日)がEdmondとのデュエットになったのは、Yngveが稽古中に歌っていたのを聴いた監督のアイディアだそうです。Edmondのパートのメロディーと歌詞は、St. Gallen版のCDには収録されていない場面で使われていた曲からの流用とのことでした。Tecklenburg(テクレンブルク)やLeipzig(ライプツィヒ)版を見たドイツの友人は、アンサンブルナンバーがカットされたり、冗長な場面が短くなっていたりと、全体的にすっきりして良くなったと言っていました。

バンドによる伴奏がシンプルな分、歌声がよりクリアに聴き取れるので、歌い手の力量が誤魔化しなくはっきり分かります。Stage EntertainmentやVereinigte Bühnen Wien(VBW、ウィーン劇場協会)が手がける大型作品でメインキャストを張ってきたYngve、Ann、Dennis、Leahの歌声の素晴らしさは勿論のこと、音程の確かさが今回は非常に印象的でした。一方、Mondego役のMartin Berger、Danglars役のAnton Graner、Albert役のMax Buchleitnerには、個人的に少々微妙に感じる部分が。結婚パーティーの場面でDanglarsとMondegoがEdmondを罠にはめようと密かに企むデュエットは、毎回音程が気になってしまいました。Edmondを陥れた三悪人が己の行為を正当化する”Die Geschichte”(罪を着せろ)では、Villefort役のDennisの渋い美声が頭一つ抜け出ていました。またローマのカーニバルの夜、美女の後を追いかけて謎の敵に捕まったAlbertが、同じく囚われの身となっていたMonte Christoと歌う”Ah, Frauen”(女って)では、余裕たっぷりに歌うYngveに対してMaxの音程が時々ふらついていたのが気になりました。

黒衣に身を包んだE-Ensembleによる冒頭のコーラスは、録音で声を重ねて重厚感を出したこともあり、アマチュアであることが全く気にならないレベルに仕上がっていました。あるときは笑いさざめくパーティーの招待客、またあるときはMonte Christoを誘惑する夜の女達、カーニバルでは仮面をつけて新体操の選手のようにリボンを操ったりと大活躍のアンサンブルメンバー。さすがにダンスのキレはアンサンブルを引っ張るプロのKathleen Bauerにはかないませんが、本格的なダンスミュージカルではないですし、少々不揃いな海賊船の場面のダンスも許容範囲のうち。E-Ensemble9名のうち7名が女性で、海賊は全員女性でした。

物語の舞台が19世紀のフランス・マルセイユから1920年代のアメリカに移され、Edmondが幽閉される牢獄Château d’If(シャトー・ディフ)は、かのアル・カポネが収監されていたサンフランシスコのアルカトラズ島に変更されるという衝撃的な稽古場レポート記事を読んでいたので、どんな演出になるのかと思いきや、舞台はフランス、時代設定も元のままでした。船長からEdmondに託されたナポレオンからの手紙は誰からの手紙になるのだろうとか、三悪人による”Die Geschichte”(罪を着せろ)の歌詞にあるChâteau d’IfをAlcatrazに置き換えるのは語呂が悪いのではとあれこれ想像しましたが、いらぬ心配に終わって良かったです。”Die Geschichte”では三悪人がバスローブ姿でサウナにいるという設定で、横になって女性のマッサージを受けたり、水を飲んだりと、なかなか面白い演出がなされていました。2幕のMonte Christoのストライプのスーツや、Albertの如何にもお坊ちゃん風なセーターとズボンは現代風でしたが、特に違和感はありませんでした。むしろ女性陣のドレスがややチープな感じだったのが残念。予算の都合で仕方がないとは思いますが、せめてMercédèsの白とピンクのドレスはもうちょっと何とかならなかったのかなあと思ってしまいました。稽古が大変な剣を用いたアクションはなく、海賊船上でのJacopoとの戦いは棒術、クライマックスのMondegoとの対決は取っ組み合いと拳銃を使ったものになっていました。

映像を使った演出は、転換がない舞台にメリハリをつけていました。牢獄で脱出用のトンネルを掘り進める場面では、舞台に設けられたトンネルに設置されたカメラからの映像が中央のスクリーンに映し出され、狭い空間に身を押し込んだEdmondと神父の動きがライブ中継されていました。Mondegoと結婚したMercédèsが、Monte Christoとして現れたかつての恋人Edmondとの再会に衝撃を受ける”Diese Augen/Der Mann ist tot”(忘れえぬ瞳/男は死んだ)では、舞台上のMercédèsのバックにカメラに向かって歌うMonte Christoのアップが映し出され、パーティーでの再会という現実から二人の内面の心の動きへと観客の気持ちを誘導する効果を上げていました。

立派な劇場で専属オーケストラと大勢の出演者で固められたSt. Gallenのオリジナル版と比べると、如何にも手作り感溢れた低予算のRöttingen版には、メインキャスト以外への期待は正直殆どなかったのですが、良い意味で裏切られました。St. Gallenでは長い物語を駆け足で表面的にさらった感が強く、登場人物への感情移入がしにくかったのですが、Röttingenでは一人一人の心の動きが丁寧に表現されており、より演劇的に深みのある作品に仕上がっていました。特にYngveの演技が圧巻! 表裏のない純朴で正直な青年Edmondが、謀略に陥り、訳も分からぬままに牢屋に放り込まれる当惑と不安。恐怖に震えながら殴る蹴るの暴行を受けるうちに人間としての尊厳を失い、僅かな食事や水を動物のようにむさぼり、ついには牢屋の片隅で生きているか死んでいるかも分からないような姿に成り果てる様には、息が詰まる思いでした。そこに現れたFaria神父に名前を尋ねられ、最初は囚人番号で答えるものの、本当の名前を聞かれていると分かったときのEdmondが、神父と抱き合いながらもう一度人間として蘇ることが出来た喜びと安堵を噛みしめる姿。絶望と再生を経てMonte ChristoとなったEdomondが、敵への憎悪に燃える一方、父の死や恋人の現状に対して抱く引き裂かれるような思い。こうした感情の積み重ねが、EdmondとMonte Christoという二つの顔を持つ男の物語に結晶していく過程を描いてこそ、作品が生きてくると言えるでしょう。Yngveには是非また何処かの劇場でMonte Christo役を演じて欲しいものです!

fnweb.deのインタビュー記事によると、今まで積極的で強い女性を演じることが多かったAnnにとっては、終盤まで受け身的に振る舞わざるを得ない状況にあるMercédèsを、緊張感を保ちつつ演じることは一種の挑戦だったようですが、舞台上では運命に翻弄されつつも自分をしっかり持ち続けている芯のある女性となっていました。終盤、Monte Christoに向かって「Albertに本当の父親を教えたい」と言うところでは、運命に流されたというよりも、むしろ限られた選択肢の中からEdmondとの愛を守るための道を選び取っていった強さを感じました。受け身なイメージがあったMercédèsでしたが、Annの持つ強さと優しさが彼女を輝きを失わない魅力的な女性に創り上げていました。

演技巧者ぶりを発揮したのは、Yngveだけではありません。検事VillefortとFaria神父の二役を演じ分けたDennisにも、大いに唸らされました。いかめしい顔つきで登場する検事役では渋く低めの声で重々しく言葉を発し、Edmondの師匠となるFaria神父としては、床下からひょっこり頭を出して「8年間も間違った方角にトンネルを掘っていたとは! 中国製のコンパスが狂ってた!」と”Tanz der Vampire”の教授を彷彿とさせる素っ頓狂な声を上げ、カーテンコールで神父のヒゲを着けてみせなければ、二役だと気がつかなかったお客さんもいたかもしれません。Dennisのシリアスな面とコメディアンな面の両方をたっぷり見ることが出来て大満足でした!

Mondego役のMartin Bergerは、やや音程が微妙な曲もあったものの、演技は素晴らしかったです。特に2幕最初、Edmondを陥れてまで手に入れたMercédèsとの夫婦仲も冷え切り、借金と酒と女に溺れるやさぐれた男に成り果てた姿や、終盤全てを失い、破れかぶれになってMonte Christoに銃口を向けるも、反射的に気づいた伯爵の銃弾に倒れる流れには、極悪人というよりも、Mondegoの人間的な弱さを強く感じました。そんなMondegoを結果的に撃ってしまったことに全身で苦悩するMonte Christoの姿には、かつては親友だった男を悼む気持ちが切ないほど滲み出ていました。

Valentine役のLeahは2幕のみの登場。出番も少なく、彼女のキャリアからすれば大変勿体なかったですが、いつも通り安定した素晴らしい歌声をソロナンバー”Schöner Schein”(優しい嘘)で聞かせてくれました。言ってみれば可憐なお嬢様の役柄で、時間短縮のために出番をカットされてもおかしくないような役ではあるものの、Monte Christoに決闘を申し込むといきり立つAlbertを思いとどまらせようとする際の強い口調や、Monte ChristoとAlbertの決闘に割って入り、Albertの命乞いをする場面で「あなたは人を愛したことがないのですか!?」と伯爵にくってかかる激しい感情表現が非常に印象的でした。AnnのMercédès同様、女性の強さを感じさせてくれる好演技が心に残りました。

“Dracula”、”Der Graf von Monte Christo”に続いてSascha Oliver BauerとWalter Lochmannのコンビがどんな作品を送り出すのか、Frankenfestspiele Röttingenの今後に要注目です。

“Der Graf von Monte Christo”
公演日程
2014年6月26日(木)20:30~23:15
2014年6月27日(金)20:30~23:15
2014年6月28日(土)20:30~23:15
2014年6月29日(日)20:30~23:15
2014年7月11日(金)20:30~23:15
2014年7月12日(土)20:30~23:15
2014年7月13日(日)20:30~23:15
2014年7月25日(金)20:30~23:15
2014年7月26日(土)20:30~23:15
2014年7月27日(日)20:30~23:15
2014年8月8日(金)20:30~23:15
2014年8月9日(土)20:30~23:15
2014年8月10日(日)20:30~23:15

会場
Burg Brattenstein
Röttingen, 97285 Röttingen
ドイツ

問い合わせ先
Tourist – Information Röttingen
Marktplatz 1
97285 Röttingen
Tel: +49 9338 9728-55
Fax: +49 9338 9728-49
http://www.frankenfestspiele.de/

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2 Comments

  1. ご無沙汰しております。
    しばらくブログが更新されていなかったのでもしや?と思っていたら
    やはり、行かれていたのですね。羨ましい!
    テクレンブルグのMAでYngveを見て以来、今回の野外劇場でのモンテクリスト伯行きたかったのですが、残念ながら夢かないませんでした。
    でも、詳しくupしていただき、ありがとうございました。
    ザンクガレンの時と劇場が異なると演出も音楽も色々違うのですね、、、
    両方観てみたかった。。。またどこかであるといいなあ。。。
    その時はぜひ、行ってみたいです。。。

    • waiwaiさん、この夏は忙しすぎてなかなか更新出来ませんでしたが、早速ご訪問下さりありがとうございます。年初に石丸さんの『モンテ・クリスト伯』を観劇して大変感銘を受けたのですが、その時Yngveで聴いてみたいと思った歌が幾つかあり、彼が演じたら面白いだろうなあと思っていたところ、本当にYngveが出演することを知って「これは行かねば!」と思った次第です。作品的には突っ込みどころもありますが、Edmond/Monte Christoの魅力でグイグイ引っ張って貰えたので、細かいことは気になりませんでした。一度レパートリーになると、また何処かで出演する可能性が出てくると思うので、waiwaiさんがご覧になれることを願っております!

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