3 Musketiere観劇記 Part 1(2010年7月)

2010年6月19日にドイツ・Tecklenburg(テクレンブルク)の野外劇場Freilichtspiele Tecklenburgで開幕した”3 Musketiere”(三銃士)。8月22日までの期間限定公演を、7月24日、25日の2回観劇してきました。

オランダ生まれのこのミュージカルは、ドイツでは2005年4月~2006年6月にBerlin(ベルリン)の Theater des Westens、2006年11月~2008年1月にStuttgart(シュトゥットガルト)のApollo Theater des SI-Centrumsで上演されました。BerlinではPatrick Stanke(D’Artagnan)、Pia Douwes(Milady de Winter)、Uwe Kröger(Kardinal Richelieu)、Sabrina Weckerlin(Constance)という豪華な顔ぶれが揃い、観に行きたいと思っていたものの都合がつかず、Stuttgartにも足を伸ばす機会がなかったため、今回が初の観劇となりました。

キャスト
•D’Artagnan: Thomas Hohler
•Milady de Winter: Femke Soetenga
•Kardinal Richelieu: Yngve Gasoy-Romdal
•Athos: Marc Clear
•Porthos: Enrico de Pieri
•Aramis: Jens Janke
•Constance: Lisa Antoni
•Königin Anna: Wietske van Tongeren
•König Ludwig XIII.: Lars Kemter
•Rochefort: Paul Stampehl
•Herzog von Buckingham: Harald Tauber
•James / Conférencier: Stefan Poslovski
•Cabarét-Sängerin / Mutter: Anne Welte

制作チーム
•監督: Marc Clear
•振付: Doris Marlis
•音楽監督: Klaus Hillebrecht
•衣装: Karin Alberti
•メイク: Stefan Becks
•舞台美術: Susanna Buller

Thomas Hohler(D’Artagnan)、Marc Clear(Athos)、Enrico de Pieri(Porthos)、Jens Janke(Aramis)、Paul Stampehl(Rochefort)、Stefan Poslovski(James / Conférencier)等、多くの主要キャストがBerlinあるいはStuttgartのプロダクションに出演経験があるためか、全体的に役がこなれている印象を受けました。Athos役のMarc Clearは今回監督も務めています。

D’Artagnan役のThomas Hohlerについて、あるドイツの友人は「Stuttgartで観たけれど、Patrick Stankeに比べると落ちる」と言っていましたが、すらっとしていて動きが良く、声も非常に力強くて申し分ないキャスティングだと思いました。今のPatrickだと、ちょっとダイエットが必要な気がします(苦笑)。Milady de Winter役のFemke Soetengaは、Hamburg(ハンブルク)の”Tanz der Vampire”でMagdaをやっていたそうです。初めて見る名前だったので、どんなものだろうと思っていましたが、今回一番の大当たり! 個人的にはドイツ語版CDのPiaよりも良かったです。顔は割と可愛らしいのですが、背が非常に高く、ライダースーツを思わせる黒い衣装に黒いロングコートを翻し、ブーツ姿で闊歩する様子が格好いい! 声もドスが効いていて、気持ちいいくらいの悪女っぷりです。その一方で秘められた過去に思いを馳せるときの歌声からは、一転して可憐で純真な少女のような印象を受けました。Kardinal Richelieu(リシュリュー枢機卿)役のYngve Gasoy-Romdalは、本来の金髪を黒髪に染めての出演。Uweの時はオールバックの肩まである白髪でした。持ち前のビブラートがかかったような独特の歌声で、宗教曲を思わせるRichelieuのテーマをUweとは全く違ったイメージで聞かせてくれました。

Athos役のMarc Clearはとにかく渋い! 2009年に”Evita”のPerón役で見たときもいい役者さんだなあと思いましたが、監督も出来るとは! Athosはこの作品の影の主役といっていいくらい、美味しい役柄です。ちなみに普段の彼はスキンヘッドで、街中のアイスカフェに陣取っている姿を見ました(笑)。Porthos役のEnrico de Pieriは、如何にも食いしん坊のPorthosらしいがっちり体型。オペラにも出ているそうで、厚みのある非常にいい声をしていました。こちらは朝食に行ったカフェで友人が目撃(笑)。Aramis役のJens Jankeは、無線通信士として大型帆船Gorch Fock号に3年間乗り組んだ後、Sydney(シドニー)で”Les Misérables”を観てミュージカル俳優になることを決意したという、異色の経歴の持ち主です。なおドイツ・Hamburg(ハンブルク)で上演された”Titanic”で、無線通信士Harold Brideを演じていますが、この人以上にこの役にはまる人はいなかったことでしょう。

Constance役のLisa Antoniは、Wien(ウィーン)の”Rudolf”のMarie Vetsera役でご覧になった方も多いでしょう。ちょっと勝ち気な役作りが、Marieを思わせました。Königin Anna(アンヌ王妃)役のWietske van Tongerenも、”Rebecca”のIch(私)や”Rudolf”のStephanie役でお馴染みです。今回は黒髪巻き毛のカツラで登場。いつものプラチナブロンドとは印象が違いますが、透明感のある歌声を聞くと「ああ、Wietskeだな~」と思いました。König Ludwig XIII.(ルイ13世、ドイツ語ではLudwigになります)役のLars Kemterは、役自体の印象が薄かったので、あまり覚えが・・・。殆ど台詞で歌は少なめ。むしろ恋敵(?)のHerzog von Buckingham(バッキンガム公、Harald Tauber)の方が、王妃とのフランス語のデュエットがあったり、Richelieuの護衛隊との戦闘シーンで剣の腕前を披露したり、王妃の昔の恋人という美味しい役柄の割に、白髪ロングソバージュのおじさんで夢がない外見(笑)だったことも併せて印象的でした。Harald Tauberは”MOZART!”や”Tanz der Vampire”等、ウィーンでも活躍している人です。Richelieuに仕える隻眼の剣士Rochefort役のPaul Stampehlは、渋い低音が魅力。剣捌きも光ります。Stefan Poslovskiは、スキンヘッドに黒と紅色の衣装、赤い手袋という独特の出で立ちで芝居小屋に立つConférencier役と、Buckinghamの従者でちょっとなよっとした感じのJames(こちらは黒髪)の二役。この人のよく通るいい声で話が始まります。

オリジナルの演出は観ていないので比較は出来ませんが、躍動感溢れる活劇シーンや、市民ボランティアが参加しての大規模なコーラスと群衆シーン、日のあるうちから始まって途中で日没を迎える自然現象を利用したTecklenburg版の演出は、非常に印象深く素晴らしいものでした。ドイツでは夏は22時頃が日没なので、21時開始の公演では1幕は自然光、2幕に入ると夜の闇と照明が舞台を演出することになります。アンサンブルが持つ松明が本物の火だったのも、野外ならではの趣向。この劇場自体、古い城跡を利用したもので、昔の城壁跡をそのまま舞台の一部に見立てています。

Royal Shakespeare CompanyからMalcolm Ransom氏をファイトディレクターに迎えて振り付けられた殺陣は、アクロバティックな二刀流あり、ユーモラスな振る舞いありと、見応えたっぷり。何しろ剣を振るうのが仕事の銃士隊、これでもかと言うほど戦闘シーンが続きます。剣を持つ14名の出演者は、5月中旬から一週間かけて、集中トレーニングをこなしたそうです。勇壮な音楽に乗った血湧き肉躍るアクションシークエンスは、観客から盛大な拍手を貰っていました。

以前のプロダクションを観ていたドイツの友人達も、Tecklenburg版を大絶賛! Tecklenburgは2006年の”Les Misérables”、2008年の”MOZART!”、2009年の”AIDA”で、ドイツのミュージカル雑誌Da Capoが選出するDa Capo Awardを受賞していますが、2010年に栄冠に輝くのは恐らく”3 Musketiere”でしょう!

余談ですが、2003年のオランダ・Rotterdam(ロッテルダム)公演でのD’Artagnan役Bastiaan RagasとConstance役のTooske Breugemは2005年に結婚し、現在二人の子供がいるそうです。また2005年のドイツ・Berlin(ベルリン)公演で同役を演じたPatrick StankeとSabrina Weckerlinは、ドイツ語圏ミュージカル界ではこれまたカップルとしてよく知られています。縁結びミュージカルかも!?

Freilichtspiele Tecklenburgの公式サイトに、180枚近い舞台写真が掲載されているので、まずは舞台の雰囲気をこちらで掴んでみて下さい。次回はドイツ語版CDの曲目に合わせて、舞台の流れを簡単にご紹介します。

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