Thomas Borchert(トーマス・ボルヒャート)出演作品紹介

日本のドイツ語圏ミュージカルファンにとっては2015年を締めくくる最大のイベント、『フランク・ワイルドホーン&フレンズ ジャパンツアー』(Frank Wildhorn & Friends Japan Tour)まで遂に1ヶ月を切りました。ドイツ語圏ミュージカルのトップスター達の中でも今最も忙しいThomas Borchert(トーマス・ボルヒャート)とSabrina Weckerlin(サブリナ・ヴェッカリン)の二人が揃って来日するとは、もうこの先スケジュール的にあり得ないのではと思われる奇跡の公演、存分に楽しみたいものです。

Sabrinaは2010年に『M. クンツェ&S. リーヴァイの世界』で初来日しました。東宝版の世界初演”Marie Antoinette”(マリー・アントワネット)で新妻聖子さんと笹本玲奈さんがダブルキャストで演じたMargrid Arnaud(マルグリット・アルノー)役を、ドイツ初演で演じたのがSabrinaです。現在Wien(ウィーン)再演版”MOZART!”にLeopold(レオポルト)役で出演中のThomasは、今回が初めての来日になります。Thomasは忙しいスケジュールの合間を縫って3月25日に東京で行われた記者会見に参加し、歌唱披露しました。げきぴあの「フランク・ワイルドホーン&フレンズ ジャパンツアー」記者会見レポートに詳細が載っています。なお記事中には来日メンバーとして”The Scarlet Pimpernel”(スカーレット・ピンパーネル)オリジナルキャストのDouglas Sills(ダグラス・シルズ)が紹介されていますが、都合により降板とのこと。代わりに”RENT”(レント)のオリジナルキャストAdam Pascal(アダム・パスカル)が出演します。

記念すべきThomasの初来日に当たり、今までに観た彼の出演作を振り返ってみました。

Elisabeth(Luigi Lucheni役)

私の初ThomasはWien(ウィーン)、Theater an der Wienで観た”Elisabeth”(エリザベート)。Lucheniがあまりにも格好良くて、Der Todそっちのけで追い続け、観劇後友人とThomas談義に大いに盛り上がりました。ちなみにこの時のDer TodはFelix Martin。2016年4月~5月にWienの”Next to Normal”(ネクスト・トゥ・ノーマル)にDan役で出演する予定です。

MOZART!(Leopold及びColloredo役)

Wien初演版”MOZART!”(モーツァルト!)、ファーストシーズンではLeopold、セカンドシーズンではColloredo役で出演していたThomas。Wolfgang役のYngve Gasoy-Romdal(イングヴェ・ガーソイ・ロムダール)とは実年齢は2歳しか違わないのに親子役でした。Leopoldには若すぎるとは思いませんでしたが、パパがこんなに格好良くてもいいのかとは大いに思いました。再演版ではThomas自身が役相応の年齢に達しており、歳月の流れを感じました。West End(ウエスト・エンド)での”Napoleon”出演の為、ファーストシーズンで降板したUwe Krögerの後継者として、Kunze及びLevay御大達から直々に指名されたColloredo役では、Wolfgangとの対決場面では雷を落としているかのような迫力を見せていました。赤と金の大司教の衣装はUweが着ていた物を使っていたためか、長身のThomasにはどことなく衣装が寸足らずに見えたものです。

Mozart! Ein Musical von Sylvester Levay und Michael Kunze

Jekyll & Hyde(Jekyll/Hyde役)

Frank Wildhornの最高傑作はと聞かれたら、間違いなく”Jekyll & Hyde”(ジキル&ハイド)を挙げます。Thomasがタイトルロール、Maya HakvoortがLisa、Eva Maria Marold(”Tanz der Vampire”のオリジナルMagda及び”MOZART!”のオリジナルCäcilia Weber)がLucyという迫力満点のWien版キャスト。ある日のこと、地下鉄Karlsplatz駅で降り、ホームでふと前を見ると、すぐ目の前にコンビニの袋らしき小さな白いビニール袋を下げたThomasがいるではありませんか! 思わず「すみません、今日は出演しますか?」と尋ねると「出るよ!」と返事してくれました。街中で偶然役者さんに会うとはびっくりでした。

この公演の途中でMayaさんは産休に入りました。彼女の最後の出演日に丁度Wien入りしたのですが、時差で眠くてうっかり昼寝してしまい、チケットを取っていなかったこともあって結局公演には行かず・・・。当時は情報不足でMayaさんのラストとは知らず、激しく後悔しました・・・。

Jekyll & Hyde: Das Musical

Elisabeth 10th Anniversary Concert (Der Tod/Luigi Lucheni役)

Wiener Konzerthausで催された”Elisabeth”上演10周年記念コンサートには、各国の”Elisabeth”出演者が集結しました。一路真輝さんが出演されたので、日本からも大勢のファンが駆けつけていました。中でも着物の御婦人方の一団には驚きました。さすが元タカラジェンヌ! このイベントはCD化されましたが、コピーガード仕様で制作されたため、PCで再生出来ません。ダウンロード版を再販して貰いたいものです。一時期黒髪のDer Todとして出演していたことがあるThomasは、LucheniとDer Todのパートを歌いました。Thomasが参加している”Elisabeth”のCDはこれだけだったと思います。ブックレットを見るとアンサンブルにMark Seibert(マーク・ザイベルト)の名前が! このコンサートには産後2週間のMayaさんも出演しました。客席後方から登場し、中央の通路を通って舞台に向かうMayaさんの後ろ姿が今でも目に浮かびます。Kunze御大が同じ通路を後ずさりしながら自前のカメラでカーテンコールの模様を撮影されていました。

Elisabeth 10th Anniversary Concert

Der Graf von Monte Christo(Edmond Dantès役)

Thomas出演作とは数年ほど縁がなかったものの、Frank Wildhornの新作”Der Graf von Monte Christo”(モンテ・クリスト伯)への出演のニュースを聞いて是非とも観たい!とスイス・St. Gallen(ザンクト・ガレン)に初めて赴きました。フライトが開演時間に間に合うか微妙だったのと、思い立った時点でネットではその日は既に完売になっていたので、到着日はチケットを持っていなかったのですが、あわよくば劇場で当日券を入手出来るかも・・・と劇場に向かいました。しかしとっぷり日が暮れた初めての街で道に迷うなと言う方が難しい方向音痴のため、劇場に着いた時点では既に公演は始まっていました。ロビーの係員に尋ねたところ、やはり満席だとのことだったので、客席扉の奥からうっすら聞こえる歌声に耳をそばだてながら、明日のお楽しみと自分に言い聞かせました。翌日の公演では久々にThomasのバズーカ砲のような歌声を聴くことが出来ました。冒頭の青年時代はやや無理があるように思ってしまいましたが、伯爵姿はさすがの格好良さ! 是非動画でご覧下さい。


Theater St.Gallen: Der Graf von Monte Christo from theatersg on Vimeo.

CDは上演に先立って制作された英語のコンセプトアルバムとドイツ語のSt. Gallenキャストアルバムの2種類あります。どちらもThomasがタイトルロールを演じています。また英語版にはPia Douwesも参加しています。

Der Graf von Monte Christo

The Count of Monte Cristo – Der Graf von Monte Christo

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Tanz der Vampire(Graf von Krolock役)

St. Gallenの”Der Graf von Monte Christo”と掛け持ちで観たWien再演版”Tanz der Vampire”(ダンス・オブ・ヴァンパイア)、スイスとオーストリアの舞台に2日連続出演することはないと思い、中1日空けて取ったTdVにThomasは出ていませんでした・・・。後で回避した前日には出ていたことを知り、ショック! その後別の機会にようやくThomas伯爵を観ることが出来ました。長身のThomasの抜きんでた存在感、強力なカリスマ性、何処までもパワフルな歌声、Sarahが魅了されるのもよく分かります! 日本でもお馴染みのMarjan Shaki(マジャーン・シャキ)、Lukas Perman(ルカス・ペルマン)と共に出演していた時の動画をご紹介します。

こちらはWien再演版の全曲録音盤。

Vampire: Gesamtaunahme Neue Wiener fassung

“Tanz der Vampire”10周年記念コンサートのライブ録音。こちらもThomas、Marjan、Lukasが出演しています。

Tanz der Vampire – 10 Jahre Jubiläumskonzert

Rebecca(Maxim de Winter役)

St. Gallenとドイツ・Stuttgart(シュトゥットガルト)で同時期に上演された”Rebecca”(レベッカ)。StuttgartではPia Douwes、St. GallenではMaya HakvoortがそれぞれMrs. Danversを演じるということで話題になりました。そしてどちらのプロダクションにもThomasがMaxim de Winter役で出演するという、これまた凄いキャスティング。私が観劇した時は、Stage Entertainmentの大型ミュージカルコンサートツアー”Best of Musical”出演のため、PiaはStuttgartの”Rebecca”には出ていませんでしたが、”Best of Musical”の方でハイライトを観ることが出来ました。ちなみにSabrina Weckerlinもこのツアーに参加しており、”Rebecca”のパートではPiaを相手に「私」を演じていました。Sabrinaは本編で「私」を演じたことはないので、ツアーだけの特別版。Maxim de Winter役は同じく本編への出演経験がないYngve Gasoy-Romdalでした。


Theater St. Gallen | Rebecca from theatersg on Vimeo.

“Rebecca”はWienとStuttgart版のCDが出ていますが、どちらもThomasは出演していません。Wien版はUwe Kröger、Stuttgart版はJan AmmannがMaxim de Winterです。

Moses – Die 10 Gebote(Naroch役)

Michael Kunze脚本、Dieter Falk音楽のSt. Gallen発オリジナルミュージカル”Moses – Die 10 Gebote”(十戒)でThomasが演じたのは、Moses(モーゼ)に敵対する司祭Naroch。映画『十戒』は大昔に観たことがあり、粗筋は分かっていたものの、聖書物はエピソードや用語に慣れていないと理解しにくいと思いました。”Jesus Christ Superstar”(ジーザス・クライスト・スーパースター)や”Joseph and the Amazing Technicolor Dreamcoat”(ヨセフと不思議なテクニカラー・ドリームコート)は別格の高みにいると思わされた作品でした。


Moses – Die 10 Gebote from theatersg on Vimeo.

Artus – Excalibur(Merlin役)

St. Gallenが再びWildhornと組んで送り出したアーサー王物語。『M. クンツェ&S. リーヴァイの世界』で2度来日したPatrick Stanke(パトリック・シュタンケ)がタイトルロール、『ウィーン・ミュージカル・コンサート 2』で初来日したAnnemieke van Dam(アンネミーケ・ファン・ダム)が王妃Guinevere、Mark Seibertが王妃に思いを寄せる騎士Lancelotで出演するという超豪華な作品に、ThomasはArtusのメンターである魔術師Merlin役で登場しています。SabrinaもArtusの腹違いの姉で彼を憎む魔女Morgana役を演じています。MorganaがMerlinを誘惑するデュエット”Begehren”(欲望)、オリジナルキャストの二人が揃っているからには是非とも今回のコンサートで披露して貰いたいです! ”Artus”は2016年夏にドイツ・Tecklenburg(テクレンブルク)の野外劇場でも上演されます。ThomasとSabrinaは出演しませんが、Merlin役は『ウィーン・ミュージカル・コンサート 2』に出演したKevin Tarte(ケヴィン・タート)が演じます。


Artus – Excalibur from theatersg on Vimeo.

Artus Excalibur

MOZART!再演版(Leopold役)

初演版でLeopoldを演じたThomasが再び同役で登場。オーディションも行われたはずですが、結局Thomas以上のLeopold役者は見つからなかったということなのでしょう。

Mozart!: Das Musical Original Cast Wien

THOMAS BORCHERT – IF I SING… –

私は残念ながら行ったことはないのですが、Thomasのソロコンサートのプロモーション映像もご紹介しておきます。ゲストのCarin Filipcicは”MOZART!”のオリジナルConstanze Nissen(初演ではNissenはアンサンブルの役でした)。男爵夫人もセカンドでやっていました。その後”MOZART!”コンサート版の男爵夫人、”Rebecca”のMrs. van Hopper(ヴァン・ホッパー夫人)、”Rudolf”のGräfin Larisch(ラリッシュ伯爵夫人)等、ウィーン・ミュージカル界に欠かせない存在となっていきました。当時は彼女がこんなにビッグになるとは予想していませんでした。

If I Sing

Dracula(Dracula役)

St. Gallenとオーストリア・GrazでThomasが出演した”Dracula”も残念ながら観ていないのですが、今回のコンサートでははずせない作品なので、音源をご紹介しておきます。”MOZART!”初演キャストのUwe KrögerとCaroline Vasicekも参加しています。

Dracula – The Musical (in German Language)

上で紹介した他にも、”Next to Normal”、”Kiss me, Kate”(キス・ミー・ケイト)、”Les Misérables”(レ・ミゼラブル)、”Das Phantom der Oper”(オペラ座の怪人)と多数のミュージカルに出演しているドイツ語圏ミュージカル界のスーパースター、Thomas Borchertの魅力を是非ライブで体験して下さい!

『フランク・ワイルドホーン&フレンズ ジャパンツアー』(Frank Wildhorn & Friends Japan Tour)
http://www.umegei.com/frank/

梅田芸術劇場メインホール
2015/12/23(水)

東急シアターオーブ
2015/12/26(土) ~ 2015/12/27(日)

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4 Comments

  1. こんばんわ、spaさん。
    ワイルドホーンコンサート楽しみですね。
    私は大阪に行く予定ですが、できたら東京も全部制覇したかったです。ゲストも豪華ですし、さすがのワイルドホーン人脈というか、クリスマスや年末で絶対に公私ともにお忙しい方々の来日には本当に感謝です。
    そういえば、先月終わりの新妻聖子さんのミュージカルコンサートの客席にリーヴァイ先生がいらっしゃいました。来年の「王家の紋章」の関連で来日されていたそうです。びっくりしました。

    • Reweさん、コンサートまでもうあと2週間ですね! 大阪までいらっしゃるとは相当気合いが入っていますね。皆で梅芸を熱く盛り上げたいものです。家族と過ごすクリスマスよりも来日公演を選んでくれた出演者達には、本当に大感謝です。

      新妻さんのコンサートにLevay御大がいらしていたとは、それは驚きです! 『王家の紋章』の音楽も楽しみです。新妻さんの素晴らしい声を活かしてくれる美しいメロディーを期待しています。

  2. いつも色々情報ありがとうございます♪
    今日、ウィーンから戻ってきました。モーツァルトの休演日に丁度THOMASのコンサートがあったので行ってきました。今回はモーツァルト共演のナンネール役、コンスタンツェ役のお二方もゲスト出演。もちろん圧巻のピアノ弾き語り。残念ながら面白いに違いない語りの部分は???。
    モーツァルトは、新演出版ですね、これは独語でも内容わかってるぞと意気込んで観たのに、あれ、この部分知らないと(笑)。どうも全身白の衣装のモーツァルトに慣れなくて。全曲CDも無事手に入れてくることができました。
    THOMASは勿論、MARKのコロレドも最高。すっかりミーハー堪能してきました。
    東宝でも新バージョンかかるのでしょうか?ちょっと期待です。

    • Fさん、お帰りなさいませ! Thomasのコンサートにも行かれたとは、充実のプログラムでしたね。Thomasが赤い薔薇の花束を嬉しそうに持っている写真を見ました。美女二人に囲まれて、トークも飛ばしていたのでしょうね。"MOZART!"はかなり手が入っていて、初演版とも違う作品のようになっていました。MarkのColloredoは品がありましたね。WolfgangとColloredoの終幕のデュエットは、東宝でも入るかもしれませんね。でも赤いコートは残して欲しいと思います。

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