John Owen-Jones Concert in Japan大阪公演(2015年8月)

2015年8月26日、大阪・サンケイホールブリーゼで行われた”John Owen-Jones Concert in Japan”(『ジョン・オーウェン=ジョーンズ コンサート in ジャパン』)に行ってきました。

ドイツ語圏ミュージカル専門ゆえ、West EndやBroadwayのスター達にはとんと疎い私。チケットを取ったのは大阪に滅多に来られないゲストの新妻聖子さん目当てで、海外ミュージカルファンの方々に呆れられることを承知で白状すると、メインのJohn Owen-Jonesのことは何も知らずに行ってしまいました。とはいえ予備知識がない分、驚きと刺激に満ちた素晴らしい時間を体験することが出来ました。

コンサートはピアノ伴奏のみのアコースティックバージョン。チラシを入手していなかったので、会場で初めて知りました。オーケストラの豪華な伴奏も魅力的ですが、ピアノと歌の一対一のシンプルな構成では、歌声がよりくっきりと浮かび上がり、息づかいや音色の繊細なコントロールを通して歌い手のエネルギーがダイレクトに伝わってくる気がします。ピアノ伴奏のJohn Quirk氏は、JOJと同じ英国はWales(ウェールズ)出身で、二人は16歳の頃からの知り合いだそう。Quirk氏自身も素敵な声の持ち主で、弾き語りで一曲披露してくれました。

“Kiss Of The Spiderwoman”で始まったコンサートは、”This Is The Moment”(Jekyll & Hyde)、”Over The Rainbow”(The Wizard Of Oz)、”The Phantom of the Opera”シークエンスと最初から贅沢な曲のオンパレード。今日会場に来ている知り合いが好きな曲だと紹介して、本来はChristineが歌う”Wishing You Were Somehow Here Again”を歌い出したのにはびっくりしました! 柔らかくて繊細な歌声に、映画の墓地の場面が思い起こされました。ピアノ伴奏がそのまま”Love Never Dies”の”Til I Hear You Sing”に流れていく構成もお洒落! 丁度ドイツ・Hamburg(ハンブルク)で2015年10月から始まる”Liebe Stirbt Nie”(Love Never Dies)の公式Facebookで連日舞台裏の紹介をしているので、個人的にタイムリーな曲でした。

“All I Ask Of You”でゲストの新妻さん登場。デコルテの美しさが際立つ真っ赤なロングドレスで、Christineを演じた新妻さん。伸びやかで安定した美しい声が、JOJと組むことによって更なる高みへと昇っていく様がたまりません! 普段からパワー溢れる新妻さんですが、デュエットでここまで思い切りがっぷりと組める相手は、日本ではなかなかいないのではないでしょうか。続いてのソロタイムでは、赤いドレスの前を左右にからげて腰の辺りで留めて黒いスパッツ姿になり、勇ましく”Man Of La Mancha”を歌い上げてくれました。スペインから情熱の風が吹いてくるような格好良さ! 新妻さんが退場した後、JOJも新妻さんの背丈の辺りに手をかざして「こんなに小さなJapanese girlなのに凄いよね!」と感嘆していました。

第1部は”Tell My Father”(The Civil War)、”Why God Why ?”(Miss Saigon)と続き、”Anthem”(Chess)でクライマックスへ。やはり”Anthem”は名曲です! 今夏スウェーデンのStockholm(ストックホルム)でABBA The Museumに行ったことを思い出しつつ聞き惚れました。

「隣の席の人と握手したらもう皆友達だよ!」「「日本語でビールって何て言うんだっけ?」「Scream for me, Osaka!!」「”I love you”って何て言うの? アイシテ・・・??? もう一回?」と客席とのコミュニケーションにも余念がないJOJ。このノリ、何処かで見たような・・・とはたと思い出したのが、『M. クンツェ&S. リーヴァイの世界』で2度来日したPatrick Stanke。やんちゃで客席いじりが大好きなちょっぴり太め(失礼)の圧倒的美声キャラという共通項を発見してからは、JOJとPatrickが重なって見えました。Patrickの次の出演作は、2015年10月10日からドイツ・Chemnitz(ケムニッツ)で上演される”Chess“(Frederick Trumper役)です。是非また来日して欲しいドイツ語圏ミュージカル界のスターです!

第2部は知らない曲が多かったので記憶が整理しきれませんが、”Music Of The Night”、”You Are So Beautiful To Me”、”Les Misérables”から”Empty Chairs At Empty Tables”、”Bring Him Home”、映画版のオリジナル曲”Suddenly”等が歌われました。

ABBAのミュージカル”Kristina”(Kristina från Duvemåla)から披露された”Down To The Sea”は随分珍しい選曲だと思いました。Stockholmで見かけたポスターによると、2015年9月12日から公演があるそうです(公式サイトはこちら)。かのMaya Hakvoortもスウェーデンまでわざわざ足を運び、「言葉は分からなかったけど内容は全て分かった!」と大感動されていた作品、いつか何処かで見る機会があるでしょうか。

「いい子にしていたらサプライズを上げるよ」と茶目っ気たっぷりなJOJは、約束通り新妻さんの再登場をプレゼントしてくれました。1部と同じ赤いロングドレス姿で、表情豊かに”I Dreamed A Dream”の歌詞を紡いだ新妻さんは日本が誇る歌姫です! 前述のPatrickも来日後に「セイコを僕のライブのゲストに呼びたい」と熱烈なラブコールを送っていました。

アンコールは今までのアコースティックムードから一転して、大迫力のカラオケをバックに”Rise Like a Phoenix”をノリノリで披露。ロックコンサートのような盛り上がりでの終演となりました。2014年のEurovision Song Contestで、オーストリア代表のConchita Wurstがこの歌で優勝したのは記憶に新しいところです。当時ドイツ語圏ミュージカル俳優達がこぞってConchitaとのツーショット写真を自身のFacebookに上げていたものでした。

繊細な高音から重厚な低音まで手を抜かずに自由自在に歌いこなす技術の高さ、マイクなしでも十分にいけるのではと思わせる惜しみない声量、一つ一つの歌が持つドラマを立体的に浮かび上がらせる表現力、観客との温かい交流を通じて素晴らしい舞台を創り出そうとする人間性。このコンサートを通じて、改めて海外のトップレベルのミュージカルスターの素晴らしさを再認識しました。サンケイホールブリーゼの音響も素晴らしく、一粒一粒クリアな音に背後まで包み込まれるようなライブならではの空気感を堪能しました。同じ空間で音楽を体感すること、アーティストの存在を身体で受け止めること、これこそが生の醍醐味です! 一度この美味を知ってしまうと、CDや映像では物足りず、どんどん舞台通いが加速してしまい、遂には海外観劇まで至ってしまうという財政的には甚だ危険な面もありますが、この快感を知らずに人生を過ごしてしまうのは残念過ぎます。舞台を見たことがない方にとっては、CDよりも高いチケット価格を考えるとなかなか踏ん切りは付かないかもしれませんが、CDの倍以上の感動を得られることは間違いありません! 主催者側の方にも、フルオーケストラのような贅沢な作りでなくていいので、足を運びやすい価格設定をお願いしたいところです。また興行会社や劇場毎にバラバラに宣伝していると、興味があっても情報が入ってこないことがあります。私も今回のコンサートは危うく行きそびれるところでした。特に関西では集客は課題だと思うので、主要な劇場が系列を超えてお互いのチラシを置く等の連携をもっと強めて欲しいです。

会場の客層が普段の日本のミュージカルと違って、仕事帰りのサラリーマン風の男性が多かったことが印象的でした。また偶然にもこのブログを読んで下さっているという方々とお話することが出来、海外観劇の参考にされていることを伺って嬉しく思いました。お声をかけて下さった皆様、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

主催者の読売新聞社のサイトで事前に発表されていた大阪・東京公演のセットリスト(予定)を転載しておきます。

セットリスト(予定)

※並びは曲順ではありません。
※曲目は予告なく変更になる可能性がありますので、ご了承ください。

【大阪公演(8/26)】
~アコースティック編成の繊細なサウンドでお楽しみください~
Music Of The Night  「オペラ座の怪人」より
All I Ask Of You  「オペラ座の怪人」より
Wishing You Were Somehow Here Again  「オペラ座の怪人」より
Bring Him Home  「レ・ミゼラブル」より
I Dreamed A Dream  「レ・ミゼラブル」より
Empty Chairs At Empty Tables  「レ・ミゼラブル」より
Over The Rainbow  「オズの魔法使い」より
Why God Why ?   「ミス・サイゴン」より
Til I Hear You Sing  「ラブ・ネバー・ダイ」より
Kiss Of The Spiderwoman  「蜘蛛女のキス」より
Anthem  「チェス・ザ・ミュージカル」より
Man Of La Mancha  「ラ・マンチャの男」より
Tell My Father  「The Civil War」より
Down To The Sea  「KRISTINA」より
Shiver Me Timbers
Someone To Fall Back On
I’d Rather Be Sailing              ほか

【東京公演(8/27)】
~バンド編成のダイナミックなサウンドでお楽しみください~
Music Of The Night  「オペラ座の怪人」より
All I Ask Of You  「オペラ座の怪人」より
Wishing You Were Somehow Here Again 「オペラ座の怪人」より
Bring Him Home 「レ・ミゼラブル」より
I Dreamed A Dream  「レ・ミゼラブル」より
Why God Why ? 「ミス・サイゴン」より
Thunderball 映画「007サンダーボール作戦」より
Man Of La Mancha  「ラ・マンチャの男」より
Til I Hear You Sing 「ラブ・ネバー・ダイ」より
This Is The Moment 「ジキル&ハイド」より
Kiss Of The Spiderwoman 「蜘蛛女のキス」より
Anthem 「チェス・ザ・ミュージカル」より
Tell My Father 「The Civil War」より
The Prayer
You Are So BeautifulTo Me
Kiss The Air
Nature Boy
I’d Rather Be Sailing
Feelin’ Good
Motherless Child           ほか

JOJのアルバムをご紹介します。画像はAmazon、バッジはiTunesにリンクしています。どちらも試聴可能です。

ライズ(RISE)
John Owen-Jones
Released: April 22, 2015

ライズ(MP3 ダウンロード)

ミュージック・オブ・ザ・ナイト(Music of the Night)
John Owen-Jones
Released: August 26, 2015

Unmasked
John Owen-Jones
Released: April 24, 2012

Unmasked(MP3 ダウンロード)

下のバッジをクリックすると、John Owen-JonesのiTunesで入手可能なタイトルの一覧が取得できます。

ABBAのBenny AnderssonとBjorn Ulvaeusによるミュージカル”Kristina”の2枚組CDもご紹介します。Carnegie Hallで行われたコンサート版のライブ録音です。

Kristina (at Carnegie Hall)
Released: May 4, 2010

このCDはiTunesでは見つからなかったのですが、スウェーデン語版の音源が提供されています。

Sexton favoriter ur Kristina från Duvemåla
Various Artists
Released: January 01, 1999

16 favoriter ur Kristina från Duvemåla(MP3 ダウンロード)

記事中でJOJに似ているとご紹介したPatrick Stankeの最新アルバム”Role of a Lifetime”は、AmazonでMP3がダウンロード可能です。

Role of a Lifetime
Patrick Stanke
Released: February 28, 2014

Patrick StankeのiTunesで入手可能なタイトルの一覧はこちら。

Booking.com

5 Comments

  1. こんばんは。コンサート後にお話しさせていただきましたノアです。
    あまりに楽しくて、時間があっという間に経ってしまいました(笑)ありがとうございました。またいろいろお話聞かせてくださいね。こちらでもまた貴重な情報を読ませていただきます!

    • ノアさん、早速のご訪問ありがとうございました。私もディープなお話が出来てとても楽しかったです。ブログも拝見しました。Drewへの絶大な愛を感じました! RaimundのJCS、同じ公演を観ていたとは奇遇です。ちなみにHerodesをやっていたArmin Kahlは、TecklenburgでZorroとMunkustrapをやっていたので、図らずも今年彼の役を3つも観てしまいました。こちらこそまた色々と教えて頂ければ嬉しいです。

    • ブログ読んでいただきありがとうございます。いろいろ偏っていてすみません汗。ウィーンJCSの時はとても寂しかったので、今度はぜひご一緒したいです。
      Arminさん大活躍なのですね。ドイツ広いのに、俳優さんはけっこう駆けずり回ってますよねーすごいなあ。

  2. spaさん、お久しぶりにお話しできてとても楽しかったです!
    JOJは、Les Misérables記念コンサートのDVDを観てから、CDを手に入れ、一度生で聴いてみたいと思っていたのですが、まさか大阪に来てくれるとは!
    歌い上げの曲は「これこれ!」と言う程の迫力があり、またしっとりした曲も豊かに聴かせてくれました。お人柄も愛すべき方のようで、大変楽しい一夜になりました。
    私もspaさんと同様、JOJにうっとりしながらPatrickを連想してしまい妙な感じでしたが、翌日のTOKYO LIVEも観たかったです。
    次は「フランク・ワイルドホーン&フレンズ ジャパンツアー」が楽しみな私です。

    • KENZOさん、こちらこそ思わぬところでお目にかかり大変驚きましたが、お声をかけて下さってありがとうございました! 海外ミュージカルファンは何処に生息しているのかと思っていましたが、あの夜ブリーゼに大集合していたというわけですね(笑)。私もLes Misérables記念コンサートのディスクは持っているのですが、皆上手いなーと浸り過ぎて、出演者の詳細までは調べていませんでした。もう一度見直さないと。JOJ、また是非大阪に来て欲しいですね!

      Wildhornは勿論行きますので、また会場でお目にかかることになりそうですね。Thomasには来日ついでに弾き語りコンサートもやって貰いたいものです。Sabrinaも遂に大阪に来てくれることになり、とても楽しみです。SabrinaがWildhornと作ったCD、来日する頃には発表されていることを期待しています。

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