3 Musketiere観劇記 Part 4(2010年7月)

Tecklenburg版”3 Musketiere”観劇記の続きです。前回の記事と、Freilichtbühne Tecklenburgの公式サイトの舞台写真も併せてどうぞ。なおネタバレがあるのでご注意下さい。

10. Wer kann schon ohne Liebe sein(愛なしに生きられる?)

王妃(Wietske van Tongeren)の部屋のバルコニーで会う王妃とBuckingham(Harald Tauber)。アカペラで始まる二人の短くも美しいデュエットはフランス語。どのくらいの観客が内容を理解していたのかなと思いつつ、私が分かったのはソレイユ(太陽)だけ(笑)。雰囲気から察するに、「あなたと私は月と太陽」とか何とか歌っていたのでしょう。王妃は公爵にフランスとの戦争を回避するよう頼みます。更に自分と会見した証拠として、戴冠の際に国王から贈られたダイヤモンドの首飾りを公爵に預け、英国国王に見せるように頼みます。

公爵が退出し、一人になった王妃は「高度な政治は、恋が花開くロマンティックな寄せ木細工の大広間の床とは違うわ。必要性というものに従う他なく、結婚はただ理性的な観点から行われる。それでもそれが愛であって欲しいと願っているわ」と歌います。続いてMilady(Femke Soetenga)が姿を現し、少女の頃にある司祭に弄ばれ、教会から烙印を押されてから、世の中に蔑まれ続けてきたことを告白します。結婚生活も、この過去の罪によって壊されてしまったMiladyですが、それでもいつかは愛が勝利するという気持ちが彼女の中には残っています。「奇跡は心を揺るがすことなく信じ続けた者のみが体験出来るわ」と歌う王妃とMilady。そこへが加わり、「この地上の何処かに私を待っている愛もあるわ。彼と私がお互いを見つけることConstance(Lisa Antoni)が出来たら、どんなにか幸せを感じられることかしら!」と歌います。愛への思いは三者三様。「愛は私達全てに生命を吹き込んでくれる」と言うMiladyの肌には、運命が永遠に刻印されています。「彼の傍にいるけれど、孤独を感じているの。夫と彼の国のために選択を迫られている私」と歌う王妃。「愛がなければ一日も生きている価値はないわ。全ての女性は密かに白馬の騎士を求めているものなの」と言うConstance。それぞれが過去、現在、未来の愛について歌っていますが、共通するのは愛なくして人は生きられないという思いです。”Wer kann schon ohne Liebe sein”(愛なしに生きられる?)は、一人一人の声が本当に伸びやかで美しく、大変豪華な三重唱でした。

宮殿前にやって来たD’Artagnan(Thomas Hohler)と公爵の執事James(Stefan Poslovski)に、Rochefort(Paul Stampehl)と護衛隊が絡んできます。隻眼の眼帯をからかって「あんたのこと知ってるよ、オペラ座の怪人だろう?」とギャグを飛ばすJamesに観客大爆笑(笑)。険悪な雰囲気になったところに、王妃との会見を終えたBuckinghamとConstanceが姿を現します。二人に襲いかかるRochefort達と、守ろうと立ちはだかるD’ArtagnanとJames。Constanceも敵にパンチを食らわせたり、拾った剣を振りかざしたりと、なかなか気が強いところを見せてくれます。JamesとConstanzeは早々に戦力外となり、BuckinghamとD’Artagnanに敵が集中します。敵の中には剣を持ったMiladyもおり、Buckinghamと一騎打ちになりますが、女といえど一歩も引けを取りません。D’Artagnanも宿敵Rochefortと一騎打ち。大人数の混乱の中、いつの間にか敵と味方が入れ替わり、気がつくとRochefortとMiladyが味方同士で一騎打ちに。「何で俺達が闘ってるんだ?」「知らないわよ、あんたが始めたのよ!」と言い争う一幕もありました(笑)。ダイヤの首飾りが入った赤いケースは、最初はBuckinghamが持っていますが、Constanceの手に渡り、それをMiladyが取り上げ、また味方が奪い返しと、敵味方の間を行ったり来たりします。

苦戦を強いられていたD’Artagnan達でしたが、駆けつけた三銃士の加勢で形勢は一挙に逆転。通りがかった洗濯女達の籠から引っ張り出した洗濯物で、敵にフェイントを食らわせる等、三銃士の面々の戦いぶりも演出が凝っていました。友人曰く、D’Artagnanとハンカチが元で決闘することになった女たらしのAramis(Jens Janke)は、ちゃっかり洗濯女を口説きつつ闘っていたそうですが、あちこちで繰り広げられる戦闘に目移りしているうちに、見そびれてしまったのが残念でした! 

D’Artagnanと三銃士の活躍により首飾りは守られ、護衛隊は退却していきました。ConstanceはBuckinghamに「未来の銃士です」とD’Artagnanを紹介し、助けてくれたお礼のキスを彼に贈ります。とろけるD’Artagnanに、パンをほおばったPorthos(Enrico de Pieri)がなにやら話かけますが、もごもごして分かりません。隣のAramisが「追いかけろ」と通訳してくれたのを受けて、慌ててConstanceの後を追っていくD’Artagnanが印象的でした(笑)。

11. Alles(全て)

家に戻ったConstanceを待ち受けていたのは、薄汚ない酔っ払い男Bonacieux(ボナシュー)。貧乏な家族を支えるために、Constanceは彼と意に染まない婚約をし、宮廷での仕事を紹介して貰ったのですが、Bonacieuxは奉公に挙がってからのConstanceの様子が気にくわないらしく、彼女に暴力を振るいます。そこへD’Artagnanが駆けつけ、Bonacieuxをぶちのめし、地下室に通じる階段に蹴落とします。ConstanceはD’Artagnanに事情を説明します。「でも今日で終わりにするわ」とBonacieuxとの縁を切る決心をしたConstanceに、D’Artagnanは恋心を打ち明けます。D’Artagnanの一生懸命さにほだされるConstance。こんな風に真っ直ぐに思いを表されたことがなかった彼女は、D’Artagnanに「言いたいことがあれば全部言って」と促します。「私が欲しいのは全て、私が上げるのは全て。私にとって大切なもの全てが手に入らず、長い間焦がれていたの。だけど突然全てが私に笑いかけたの。何故ならあなたがこの世の全てになったから」。お互いに「あなたが世界の全て」と二人の世界に入るConstanceとD’Artagnanでした。

原作ではBonacieuxはConstanceの年が離れた夫でしたが、ミュージカルでは婚約者の設定になっています。D’ArtagnanがConstanceと出会ったとき、従者が「マドモワゼル」と呼びかけた時、「人妻ならマダムじゃないの?」と思いましたが、ミュージカル向けに設定変更していたのですね。

物語の次の場面は、狩りの季節の幕開けです。”Heute wird gejagt!”(今日は狩りだ)と陽気なコーラスに乗って、国王や貴族、民衆など大勢の人間が舞台に登場します。その中にはRichelieu(リシュリュー枢機卿、Yngve Gasoy-Romdal)の姿もあります。モスグリーンとオレンジの狩猟用ドレスに身を包んだMiladyとRochefortが、D’Artagnanの妨害によってBuckinghamを取り逃がしたことを枢機卿に報告します。しかしやられっぱなしではいないMiladyは、王妃が公爵にダイヤモンドの首飾りを託したことを枢機卿に教え、国王の誕生日に王妃がその首飾りを身につけて臣下に見せてほしいと願い出てはどうかと入れ知恵します。そんな陰謀が計画されているとは知らないお気楽な一行は、陽気に狩りを楽しんでいます。国王が狙いを定めてライフル銃を撃つと、城壁の上で待機していた4人の村人が、それぞれの手に用意していた鳥を一斉にぼたっと落とし、観客の笑いを誘っていました。

一行が大いに盛り上がっている中、RichelieuはMiladyの企み通り、国王に首飾りの件を進言します。何も知らない国王は、「それは良い考えだ!」と枢機卿の願いをすぐに聞き入れます。枢機卿の演説を聴いていた周りも賛同します。計画が上手くいった枢機卿も、銃を手にして狙いを定めます(聖職者でも狩りはOKなのでしょうか?)。しかし彼が放った弾は、城壁の上にいた村人の胸に当たってしまいます。「枢機卿ピンチか!?」と思いましたが、特に慌てた素振りも見せずに、MiladyとRochefortを従えて悠々と退場していったのには驚きました(苦笑)。

一方で首飾りを公爵に渡してしまった王妃は真っ青になり、秘密を共有するConstanceに「どうしたらいいの!?」と助けを求めます。「使者を送って取ってこさせましょう」と王妃を勇気づけるConstance。彼女の脳裏には、頼るべき人物が浮かんでいるようです。いつの間にか人々が王妃を取り囲み、”Heute wird gejagt!”(今日は狩りだ)と繰り返しながら、包囲網を縮めていきます。追い詰められた王妃を狩りの獲物に見立てた演出が大変効果的でした。長調から短調に転調したメロディーの不気味な響きも、前途多難さを予感させてくれます。歌詞を確認しようと思ったら、残念ながらこの曲はCDには入っていませんでした。

12. Einer für alle (Finale 1. Akt)(一人は皆のために、1幕フィナーレ)

Constanceが首飾りの使者として選んだのは、やはりD’Artagnanでした。1週間後の国王の誕生日までに英国へ往復し、首飾りを無事に王妃に届ける大役に、サポートを申し出る三銃士の面々。「一人は皆のために、皆は一人のために!」と誓う4人。「何が起ころうと、どんな危険があろうと、俺たちはひるまずに炎をかいくぐる!」

Part 5に続きます。

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