公演開催が発表されて以来、ずっと待ち続けていた『フランク・ワイルドホーン&フレンズ ジャパンツアー』(Frank Wildhorn & Friends Japan Tour)。2015年12月23日の大阪公演、昼夜2回を鑑賞しました。
『ジキル&ハイド』(Jekyll & Hyde)、『ビクター/ビクトリア』(Victor/Victoria)、『スカーレット・ピンパーネル』(The Scarlet Pimpernel)、『南北戦争』(The Civil War)、『ドラキュラ』(Dracula)、『NEVER SAY GOODBYE』、『MITSUKO~愛は国境を越えて』(Mitsuko)、『シラノ』(Cyrano de Bergerac)、『モンテ・クリスト伯』(The Count of Monte Cristo)、『ボニー&クライド』(Bonnie & Clyde)、『カルメン』(Carmen)、『GOLD~カミーユとロダン』(Camille Claudel)、『ルドルフ』(Rudolf)、『アリス・イン・ワンダーランド』(Wonderland: Alice’s New Musical Adventures)、『デスノート』(Death Note)等、ミュージカルファンの胸を躍らせる数々の作品を生み出してきたフランク・ワイルドホーン(Frank Wildhorn)本人が率いるバンドに、米国からアダム・パスカル(Adam Pascal)、ジャッキー・バーンズ(Jackie Burns)、ドイツからトーマス・ボルヒャート(Thomas Borchert)、サブリナ・ヴェッカリン(Sabrina Weckerlin)、そして日本からは和央ようかの計5名のソリストを迎えてのコンサート、聴く前から素晴らしいものになるとの確信を持っていましたが、現実は想像を軽く飛び越えてしまいました。
オープニングナンバーは『鏡の国へ』(アリス・イン・ワンダーランド)。『不思議の国のアリス』を現代のニューヨークに置き換えた物語。片方の肩を出したセクシーな濃いマゼンタのミニドレスのSabrina、背中が大きく開いた真っ赤なワンピースのJackie、銀色に輝くドレープが美しいミニドレス姿の和央さんの美女3人と茶色のスーツ姿のAdam、紺色の上下のThomasが舞台に並ぶ姿は、壮大な夜会の幕開けに相応しいゴージャス感満載。いきなりトップスピードで疾走が始まったような、迫力あるコーラスでした。続いての『炎の中へ』(スカーレット・ピンパーネル)、燃えさかる炎のようなライティングをバックに、AdamとThomasが勇ましく歌い上げました。『スカーレット・ピンパーネル』は日本では宝塚で初演されました。フランス革命の最中、毎日のように断頭台の刃が血に染まるパリから貴族達を救い出す謎の集団スカーレット・ピンパーネル(紅はこべ)、そのリーダーの正体は一見優男の英国貴族パーシー。その妻でフランス出身の元女優マルグリットと弟アルマン、スカーレット・ピンパーネルの正体を暴こうとする革命政府全権大使のショーヴランら多彩な人物が活躍する冒険活劇。2016年秋には大阪と東京での公演が予定されています。
Wonderland, Alice Through a Whole New Looking Glass (Original Broadway Cast Recording)
The Scarlet Pimpernel: The New Musical Adventure – Original Broadway Cast Recording
次の『ハヴァナ』は日本でそのうち上演したい作品との紹介がWildhorn自身からなされたのですが、それ以上の説明がないまま始まりました。どういう心構えで聴けばいいのか戸惑ってしまいましたが、女性3名がディスコでノリノリに踊っているような感じの曲でした。プログラムによると、カリブ海の真珠と呼ばれていたハヴァナの街にやって来た小説家志望の女性が、自らの野心と恋との間で揺れ動く話とのこと。そもそもまだ舞台にかかっていない作品らしく、Wildhornの元妻のLinda Ederのソロアルバムに幾つかの楽曲が先行収録されているそうです。”Havana”はアルバム”It’s No Secret Anymore”に収録されています。
Thomasの最初のソロナンバーは『ルドルフ ザ・ラスト・キス』より『私という人間』(ドイツ語タイトル:Mut zur Tat)。オーストリアの皇太子ルドルフが「最早皇太子を演じる時ではない、今こそ皇太子になるべき時だ」と決意する歌です。ウィーンでも上演されたのでドイツ語かと思いきや、英語での歌唱でした。最初からThomasパワー炸裂、何のセーブもなしに全開で聴かせてくれました。ただ個人的にはこの曲はウィーン版オリジナルキャストのDrew Sarichの高めの声で聞き慣れているので、どちらかというと低音寄りのThomasの声にはキーがやや高めに思えました。また曲的にも前半は地味なので、『ルドルフ』から選ぶなら『明日への階段』(ドイツ語タイトル:Der Weg in die Zukunft)の方が聴きごたえがあるのにと思いましたが、コンサートの構成としては派手で活気のあるパートからスローパートへの転換点に当たる曲なので、敢えて選ばれたのかもしれません。
ウィーンで上演されたドイツ語版、青いカバーは全曲ライブ録音盤(2枚組)、赤いカバーはハイライト盤です。
Rudolf – Affaire Mayerling / Gesamtaufnahme
Rudolf – Affaire Mayerling / Cast Album Wien
名前を書いた相手を死に追いやるデスノートを手にした天才高校生の物語『デスノート』は、漫画から映画、アニメ、テレビドラマと多方面に展開し、Wildhornによって『デスノート THE MUSICAL』としてミュージカル化されました。そのテーマ的な曲『ハリケーン』(上演時のタイトルは『デスノート』)は、ノートを通じて殺人を犯してしまった主人公夜神月(ヤガミライト)の苦悩が、ノートの力で正義を行い、新世界の神になる決意に変わる様を現しています。曲をたゆたうように支配する暗い情熱を、Adamのハスキーボイスがしっとりと、時に激しく聴かせてくれました。こちらも曲調としては地味目なので、コンサートの流れ的には早くも後半のような気分になりました。
『デスノートTHE MUSICAL』ライブ録音盤 CD浦井健治バージョン
スローパートの白眉は、Sabrinaの『あんなひとが』(ジキル&ハイド)。虐げられ、蔑まれて生きてきた娼婦ルーシーが、自分の怪我を手当てしてくれた上、何かあれば頼るようにと優しい心遣いを見せてくれたジキルを思い、「もしあんな人が私のような人間を見つけてくれたら、世界は全く変わるのに!」と思いを歌い上げる名曲です。髪を高く結い上げ、金片が散りばめられた透け感のあるロングドレスに身を包んだSabrinaの凜とした立ち姿に、一気に彼女の存在が劇場空間を支配したように感じました。曲名は英語での発表でしたが、歌い始めたのはドイツ語の歌詞。てっきり英語だと思い込んでいたのでちょっとびっくりしましたが、Sabrinaの魂のこもった歌には言語の壁は存在しません! 歌の情景が何処までも広がり、劇場空間がSabrinaが紡ぎ出す世界に包み込まれていきました。観客の心がまさしく彼女に奪われたひととき、いつまでも彼女の声が響いていて欲しいと願ったのは私だけではないでしょう!
Jekyll & Hyde: The Musical (1997 Original Broadway Cast)
続いては和央さんの『NEVER SAY GOODBYE』 メドレー(ワン・カード/僕が探す人/運命の人/NEVER SAY GOODBYE)。スペイン内戦を背景に、カメラマンと劇作家志望の女性との恋を描く作品で、古き良きモノクロ映画の世界を彷彿とさせる内容でした。Wildhornが宝塚の為に曲を書き下ろすと知り、大劇場に観に行ったことを懐かしく思い出しながら聞きました。
JackieとThomasの『罪な遊戯』(ジキル&ハイド)は、Wildhornのムーディーなピアノ演奏で始まりました。背中部分が黒いレースのミニドレスを身につけたJackieのセクシーな歌声に、途中からThomasの声が忍び寄ってきます。ルーシーを野獣のように支配しようとするハイドと、抗いつつもその野蛮な魅力に囚われていく女心。パワフルな二人がぶつかり、火花を散らす迫力でこの歌を聞くことが出来る幸せ! 大人のムードで終わるかと思いきや、ThomasがJackieに腰フリダンスをしかけ、「さっさと行きなさい!」と犬のようにあしらわれると、がっくりうなだれてしょんぼりとぼとぼ袖に消えていくというおちゃらけモードになりました。Thomasの正体(?)を知らない方々はびっくりしたことでしょう。Thomasにギャップ萌えするかどうか、この辺は好みが分かれるような気がしますが、如何でしょうか? その場に残ったJackieはセットの階段に腰掛け、『デスノート THE MUSICAL』から死神レムの歌『愚かな愛』を美しく感情豊かに聞かせてくれました。バンドのムードたっぷりの演奏も相まって、ジャズバーでお酒を片手に聴き入るような、大人の上質な音楽空間が繰り広げられました。
セットリストでは次も『デスノート THE MUSICAL』からAdamとThomasのデュエット『ヤツの中へ』が披露される予定でしたが、何故か割愛されており、その次のAdamのソロ曲『サラ』(南北戦争)に移りました。珍しくWildhorn自身から内容の説明があり、南北戦争の際に戦場の兵士が故郷の恋人宛に書いた手紙の歌ということでした。未見の作品でしたが、少しでも説明があったおかげで、Adamの歌の世界に入りやすかったです。
ダークでバラードな展開がしばらく続いた後に登場したSabrinaとJackieのデュエット、『イカれた帽子屋』(アリス・イン・ワンダーランド)では二人のパワーが炸裂! 双方がお互いのパワフルな声を受け止め、打ち返す力を持っているパートナーとのデュエットを心から楽しんでいる様子が伝わってきました。夜公演では昼よりも更に進化が感じられました。親和力高し! この曲はジャズファンも楽しめそう。
ホイットニー・ヒューストンへの提供曲『ブロークン・ハーツ』は、これまで紹介されたWildhorn作品を観たことがない人でも、きっとご存じでしょう。『あんなひとが』に続いてSabrinaのソロの魅力に引き込まれる至福のひととき。SabrinaがCDを出すときはこの曲も是非収録して欲しいです! 今回のコンサート、Sabrinaに割り当てられた曲がWildhorn作品の中でも特に名曲揃いだったことも、彼女の印象を強めた一因だと思いました。”Frank Wildhorn & Friends Live from Vienna”にはLinda Ederの歌が収録されています。
Frank Wildhorn & Friends Live from Vienna
第1部のラストは和央さんによる『後ろを振り向かずに』(MITSUKO~愛は国境を越えて~)。明治時代にオーストリアの貴族に嫁いだ日本人女性青山みつ、後のクーデンホーフ=カレルギー光子の生涯を描いた作品。震災直後の上演だったことがWildhorn氏の口から説明されると、震災当日に滞在していたパリのことが思い出されました。マドレーヌ寺院の階段を下りているときに、たまたま前にいた日本人二人が仙台の地震の話をしていたのが、私が震災のニュースを聞いた最初でした。日本ならではの選曲、そして心に残るメロディーが流れる中、緞帳がゆっくりと下りていきました。
休憩を挟んで始まった第2部、冒頭はバンドによるクリスマス・メロディー。思いがけないクリスマスプレゼントでした。
事前に発表されていたWildhorn作品以外の3曲が続きます。まずは『オール・ザット・ジャズ』(シカゴ)。和央さん、細い! 足首から太股まで同じ細さかと錯覚してしまうスリムさ! 声と外見にボリューム感があって、バックダンサーがついていればもっと華やかなナンバーになったことでしょう。シングルで見せるのはちょっと勿体ないナンバーでした。
Chicago: The Musical (1996 Broadway Revival Cast)
「二人の帽子屋に続いて二人のエルファバ」と紹介されたSabrinaとJackieによる『自由を求めて』(ウィキッド)。Sabrinaはドイツ、Jackieはブロードウェイでそれぞれエルファバを演じていました。Sabrinaは最初ドイツ語で歌っていましたが、サビは二人で英語でのデュエット。劇場にエルファバ旋風吹き荒れる! 二人の伸びやかな歌声に、観客の魂も重力から解放されて自由に飛び回りました!
Frei und schwerelos (Sabrina Weckerlin)
『レント』のオリジナルキャストAdamによる名曲『ワン・ソング・グローリー』、塚田剛さんのギター伴奏に乗ったメロディーが、心に染み入っていきました。Adam自身もギターでコードを鳴らしていました。
Rent (1996 Original Broadway Cast)
Jackieのソロナンバー『今日やりたいこと』(アリス・イン・ワンダーランド)。ジャジーに聞かせてくれたこのナンバー、Jackieの明瞭でキラキラと輝く伸びやかな声で発する”Finding Wonderland”という言葉に、遙か彼方への憧れを誘うような響きが感じられました。Jackieのコンサートを是非ビルボードでお願いしたいです!
二人の帽子屋、二人のエルファバと来たら、次は二人のドラキュラ。『ドラキュラ』より『長く生きるほど』、和央さんファンにとってはお待ちかねのドラキュラだったことでしょう。長いマントが似合うのはさすが元男役。でも歌い始めると女性でした。『ドラキュラ』の公演では低い声で中性的な妖しい魅力で演じていたこの役、せっかくなら元男役ならではの低音で聞かせて貰いたかった気もしました。途中でThomasが加わり、ダブル伯爵のデュエットに。Thomasはドイツ語での歌唱でした。二人が同時に歌う部分では日本語とドイツ語で呼吸のタイミングや単語の切れ目が合わず、ぎくしゃくした感があったのが残念です。和央さんがシンクロ部分だけでもドイツ語で歌ってくれれば良かったのですが。Thomasがソロで歌った部分も長さやメロディー的にやや物足りなく、もう少し彼の魅力が伝わる部分を多く担当出来ていればと思いました。昼公演では歌い終わった後、このタイミングならきっとそうくると思った通り、Thomasが和央さんの手を取って紳士らしく手の甲にキスしていました(実際には寸止めのはず)。夜公演でも動きからしてThomasは多分そのつもりだったと思うのですが、和央さんの方が気がついておらず、そのままマントを颯爽と翻して退場してしまいました。これは文化の違いで、多分欧米の女性ならここで手を取られると分かったはず。言葉は勿論ですが、こういうちょっとした慣習が身についているかどうかも、欧米社会で生活していくには大事だと思います。素敵な男性に手を取って貰えるチャンス、逃してはいけません!
舞台に残ったThomasのソロナンバーは、彼がタイトルロールになることを想定して書かれた『モンテクリスト伯』より『地獄に堕ちろ!』。無実の罪で投獄された青年エドモン・ダンテスが、牢獄で出会ったファリア神父の教えの元に学問や武闘術を身につけ、脱獄に成功した後、自分を陥れた人間達がのうのうと暮らしていることを知り、怒りを爆発させます。悪党共を地獄に突き落としてやると誓うエドモン=モンテ・クリスト伯の激情が、Thomasの凄まじいまでの声量を通して放たれます。その勢いはさながら決壊したダムから噴出する大量の水のよう。聞いていてそのパワーに押し流されそうになりました。何処までも伸びるラストトーン、思わずThomasの喉を心配してしまうくらいの強さでした!
Der Graf von Monte Christ (English)
Der Graf von Monte Christo (German)
SabrinaとAdamによる『あなたこそ我が家』(スカーレット・ピンパーネル)、今回のプログラムでは男女のデュエットは『罪な遊戯』とこの曲しかなく(『長く生きるほど』は元々はデュエット曲ではないので除きます)、更に言えば正統派のラブソングはこの曲のみ。SabrinaとAdamの声には、本質的に何処か切なさが宿っているように感じます。自分が帰り着き、安らげる場所を求める男女が、闇の中に差す一筋の光のようにお互いを照らし合い温め合う、そんな優しさを感じたデュエットでした。
彫刻家のロダンとその弟子で愛人だったカミーユ・クローデルの出会いと別れを描いた『GOLD~カミーユとロダン~』。日本では石丸幹二さんと新妻聖子さんが出演しました。新妻さんのCD『SEIKO』にも収録されている『ゴールド』は、元々は2002年のソルトレイクシティオリンピックの為に書かれた曲で、後にミュージカルに使われることになったそうです。この曲でもSabrinaの一音一音を慈しむような表現が、聴く人全ての心を優しく豊かに包んで行きました。曲のタイトルの通り、黄金色の光が彼女の全身から立ち上っているような、神々しいまでの存在感! 本当に来日してくれてありがとうと声を大にして叫びたいくらいです!
新妻さんの『GOLD』ではWildhorn自身がピアノ伴奏を担当しています。
Jackieの『新たな生活』(ジキル&ハイド)も密かに楽しみにしていたナンバー。イントロのフルートの音色が尺八のように聞こえたのは、私だけでしょうか? 冒頭からしばらくはアカペラで、Jackieの美しい声がLucyの新しい人生への希望を静かな空間に響かせました。やっぱり『ジキル&ハイド』はWildhornの最高傑作です! 今回のプログラムにも4曲入っていました。願わくばSabrinaとJackieのデュエットで”In His Eyes”も聴きたかったです。是非次回に!
コーラスとバンドメンバー紹介に続き、とうとう最後の曲『時が来た』(ジキル&ハイド)が始まりました。勿論歌うのはThomas。ドイツ語の響きで始まった瞬間、ああ、”Dies ist die Stunde”だと思いました! ウィーンでのコンサートCDよりは少し短めのラストの音でしたが、たっぷりの声量でロングトーンで聴かせてこそ、この曲の壮大さ、魅力が伝わります! 贅沢なコンサートを締めくくるに相応しい盛り上がり!
一旦退場してから再び出てくるというアンコールが嫌いだというWildhornのリクエストにより、舞台に勢揃いしたキャストはそのままアンコールナンバーの『一つの心に』(NEVER SAY GOODBYE)に突入。全員で舞台中央の小さな階段にぎゅっと身を寄せ合って座りながらお互いを讃えている姿に、各国から集まったアーティストが短期間に友情を深めた姿を見ました。和央さんがメインパートを日本語で歌い、サビになると海外組も日本語での歌唱に加わりました。Sabrinaは日本語パートをしっかり物にしていて、とても綺麗な発音で歌っている声が聞こえてきました。Thomasは言葉数が多い箇所はちょっと怪しそうでしたが、「一つの心に固く結ばれ」と一生懸命歌っていました。全編リレー式で海外組もソロパートを歌っても良かったかなと思いましたが、忙しいスケジュールの合間を縫って全く未知の言葉で書かれた歌詞を覚えるのは大変でしょうから、今回の方法がベストだったのでしょう。和央さんファンの方々が客席に多く(サイリウムの光具合で分かりました)、『一つの心に』は恐らく皆さんご存じの和央さん退団公演のナンバーだったので、アンコールは大いに盛り上がりました。来日公演では時として日本の観客向けに一部日本語で歌うことがあり、原語で聴くのを楽しみにしていたのにとちょっとがっかりな時もあるのですが、今回は今回はアンコールのみ。本編ではThomasとSabrinaの母国語であるドイツ語での歌唱も複数あり、個人的には言語バランスが取れていて満足でした。
今回取り上げられた曲目、『スカーレット・ピンパーネル』、『NEVER SAY GOODBYE』は宝塚での上演、『ルドルフ ザ・ラスト・キス』、『GOLD~カミーユとロダン~』は東京のみの上演、『デスノート THE MUSICAL』は漫画原作、『ハヴァナ』と『南北戦争』は日本未上演と様々な背景を持つWildhorn作品から選ばれたため、よほどのWildhornファンでない限り、多くの観客にとっては知らない曲が多い状態になっていました。こうしたコンサートは出演者に興味があるか、または作品を通じて多くの曲を知っているからこそ、行きたいと思うものです。勿論新しい曲の魅力を伝えることも大事ですが、公演前に発表されたセットリストからは、S席12,000円、A席6000円というミュージカル並みの価格で実際に劇場に足を運んで貰うには、少々ハードルの高い構成だと感じました(私自身も未見の作品があると思いましたが、よく見たら日本未上演の『ハヴァナ』と『南北戦争』以外は全部見ていました・・・)。3階最後列を3000円にしたり、1階後方席を6000~8000円程度にする等、もっと価格帯にバリエーションがあれば、必ず足を運ぶコアなファン以外でもちょっと行ってみようかと思えたのではないでしょうか。
出演者、演奏者共に期待以上に素晴らしかったコンサートで、最終的には客席も埋まっていましたが、チケットの売れ行きは必ずしも好調ではなかったように感じられたのは残念な点でした。Wildhornと和央さんのセレブ婚が頻繁に宣伝材料になっていましたが、ワイドショーの視聴者やスポーツ紙、週刊誌の読者層がコンサートの集客に結びつくだろうかと甚だ疑問に思いました。そうした一過性の話題で集客するのではなく、大阪近辺であればフェスティバルホールやビルボード、兵庫県立芸術文化センター等、音楽鑑賞にある程度の金額を出しても良いと思う人達が集まる場所で、NYや欧州からミュージシャンが来ることを前面に出した宣伝をした方が、効果を期待出来るのではないでしょうか。また今回の内容であれば、ジャズファンもターゲットになり得ると感じました。
上海から来日したというファンや、ドイツから来ているらしいファンの姿もありました。英語での情報発信がもっとなされていれば、中国や韓国からの集客ももっと見込めると思います。一番のハードルはチケット購入でしょう。英語サイトでのチケット購入及びセルフプリントが導入されれば、飛躍的にハードルは下がります。今やドイツ語圏ではプリントチケットでないところの方が少ないくらいです。韓国のように、観劇当日に予約メールを持っていくと劇場窓口で引き取りが出来るシステムでも良いでしょう。セットリストも公式サイトではチラシの画像だったので、テキストデータで検索しやすいように作って貰いたいものです。
物販も大半が和央さんのグッズで、海外組はAdamのCDくらいしかありませんでした。何枚も出ているThomasのCDがなかったことがショックです。もし会場でCD販売されていれば、公演終了後の勢いで購入した人は相当いたはずです。少なくとも休憩時間に流れていたウィーン公演のライブ録音CD”Frank Wildhorn & Friends Live from Vienna”は置くべきでした。主催者側と出演者の間でどういう話になっているのかは分かりませんが、「売りたければどうぞ」ではなく、むしろ主催者側が積極的にグッズ販売を勧めるべきです。CDを聴いていれば、次にまた同様の公演があったときに、足を運んでくれる確率が上がります。いわば洗脳作戦です! NYは不明ですが、ドイツの会場は小さいことが多く、日本の劇場の規模を知らずにCDを数十枚程度しか持ってこない可能性もあるので、枚数の目安を知らせておくと良いでしょう。
コンサートの感想から運営について思ったことまで思いつくまま書いたため、長くなってしまいましたが、こうした来日公演を楽しめる環境を提供してくれる方々には、本当に感謝しています。出演者達も日本での滞在を相当楽しんだようで、ツイッターやFacebookに写真や感想を沢山投稿していました。日米欧の普段は会う機会のない一流アーティストに出会いの場を提供したことも、今回の公演の大きな収穫でしょう。JackieとSabrinaのデュエットをまた聴きたい、今回聞けなかったThomasとAdamの『ヤツの中へ』(デスノート THE MUSICAL)も聴いてみたいと、ファンとしても新たな欲求が湧いてきています。是非今後もこうした企画を続けて下さい!
最後にセットリストを紹介しておきます。プログラムに記載されていた『デスノート THE MUSICAL』の『ヤツの中へ』は、本番では割愛されていました。また第2部冒頭のバンドによるクリスマス・メロディーは、プログラムに掲載されていない大阪公演のみのスペシャルナンバーでした。アンコールナンバーもプログラムには記載されていませんでした。
フランク・ワイルドホーン&フレンズ ジャパンツアー 2015
Frank Wildhorn & Friends Japan Tour 2015
第1部
鏡の国へ 『アリス・イン・ワンダーランド』 全員
Through The Looking Glass (Wonderland) – All
炎の中へ 『スカーレット・ピンパーネル』 アダム・パスカル/トーマス・ボルヒャート
Into The Fire (The Scarlet Pimpernel) – Adam Pascal & Thomas Borchert
ハヴァナ 『ハヴァナ』 ジャッキー・バーンズ/サブリナ・ヴェッカリン/和央ようか
Havana (Havana) – Jackie Burns, Sabrina Weckerlin & Yoka Wao
私という人間 『ルドルフ ザ・ラスト・キス』 トーマス・ボルヒャート
Measure Of A Man (Rudolf) – Thomas Borchert
ハリケーン 『デスノート THE MUSICAL』 アダム・パスカル
Hurricane (Death Note) – Adam Pascal
あんなひとが 『ジキル&ハイド』 サブリナ・ヴェッカリン
Someone Like You (Jekyll & Hyde) – Sabrina Weckerlin
『NEVER SAY GOODBYE』 メドレー(ワン・カード/僕が探す人/運命の人/NEVER SAY GOODBYE) 和央
Medley from Never Say Goodbye – Yoka Wao
(One Card/My Taste In Women/The Women In My Life/Never Say Goodbye)
罪な遊戯 『ジキル&ハイド』 ジャッキー・バーンズ/トーマス・ボルヒャート
Dangerous Game (Jekyll & Hyde) – Jackie Burns & Thomas Borchert
愚かな愛 『デスノート THE MUSICAL』 ジャッキー・バーンズ
When Love Comes (Death Note) – Jackie Burns
ヤツの中へ 『デスノート THE MUSICAL』トーマス・ボルヒャート/アダム・パスカル
Playing His Game (Death Note) – Thomas Borchert & Adam Pascal
サラ 『南北戦争』 アダム・パスカル
Sarah (The Civil War) – Adam Pascal
イカれた帽子屋 『アリス・イン・ワンダーランド』 ジャッキー・バーンズ/サブリナ
The Mad Hatter (Wonderland) – Jackie & Sabrina Weckerlin
ブロークン・ハーツ サブリナ・ヴェッカリン
Where Do Broken Hearts Go? – Sabrina Weckerlin
後ろを振り向かずに 『MITSUKO~愛は国境を越えて~』 和央ようか
Don’t Look Back (Mitsuko) – Yoka Wao
第2部
クリスマス・メロディー
Christmas Melody
オール・ザット・ジャズ 『シカゴ』 和央ようか
All That Jazz (Chicago) – Yoka Wao
自由を求めて 『ウィキッド』 ジャッキー・バーンズ/サブリナ・ヴェッカリン
Defying Gravity (Wicked) – Jackie Burns & Sabrina Weckerlin
ワン・ソング・グローリー 『レント』 アダム・パスカル
One Song Glory (Rent) – Adam Pascal
今日やりたいこと 『アリス・イン・ワンダーランド』 ジャッキー・バーンズ
Finding Wonderland (Wonderland) – Jackie Burns
長く生きるほど 『ドラキュラ』 トーマス・ボルヒャート/和央ようか
The Longer I Live (Dracula) – Thomas Borchert & Yoka Wao
地獄に堕ちろ! 『モンテクリスト伯』 トーマス・ボルヒャート
Hell to Your doorstep (The Count of Monte Cristo) – Thomas Borchert
あなたこそ我が家『スカーレット・ピンパーネル』サブリナ・ヴェッカリン/アダム・パスカル
You Are My Home (The Scarlet Pimpernel) – Sabrina Weckerlin & Adam Pascal
ゴールド 『GOLD~カミーユとロダン~』 サブリナ・ヴェッカリン
Gold (Camille Claudel/Gold) – Sabrina Weckerlin
新たな生活 『ジキル&ハイド』 ジャッキー・バーンズ
A New Life (Jekyll & Hyde) – Jackie Burns
時が来た 『ジキル&ハイド』 トーマス・ボルヒャート
This Is the Moment (Jekyll & Hyde) – Thomas Borchert
アンコール:一つの心に 『NEVER SAY GOODBYE』 全員
Encore: One Heart (Never Say Goodbye) – All
Frank Wildhorn(フランク・ワイルドホーン)
Cast:
Thomas Borchert(トーマス・ボルヒャート)
Jackie Burns(ジャッキー・バーンズ)
Adam Pascal(アダム・パスカル)
Yoka Wao(和央ようか)
Sabrina Weckerlin(サブリナ・ヴェッカリン)
Musician Piano: Frank Wildhorn(フランク・ワイルドホーン)
Bass: Julia Pederson(ジュリア・ペダーソン)
Woodwinds: David Mann(デイヴィッド・マン)
Drums: Clint de Ganon(クリント・デ・ギャノン)
Guitar: Go Tsukada(塚田剛)
Percussion: Yuki Hasegawa(長谷川友紀)
Chorus:
Soko Takigawa(多岐川装子)
Takayuki Yamana(山名孝幸)
Tohru Wakaizumi(若泉亮)
Mina Yamanaka(山中美奈)
spaさん、Frank&Friendsの詳しいご報告をありがとうございました!感動を改めて追体験できました。
生Sabrinaと生Thomasを聴いたことがなかったので(CDは山ほどありますが)、今回はずっと楽しみにしてました。大阪2回、東京2回と、合計5公演のうち4回も行ってしまいました。出演者も演奏者もすばらしく、全員よかったのですが、やっぱりSabrinaとThomasが、特にドイツ語での歌唱が最高でした。Sabrinaの歌は、ただパワフルというだけでなく、感情がひしひしと伝わってくるもので、CDでも好きだったのですが、やっぱり生は違うなと改めて感じました。いつかドイツで彼女のミュージカルを観劇したいものです。
Thomasのモンテクリスト伯と最後のDies ist die Stundeの迫力には参りました。彼は最初から最後までコンサートを盛り上げようとするサービス精神も際だっていて、こんな人だったのかとビックリしましたが、私は好感を持ちました。
東京での千秋楽が全員、パワー全開で特に良かったですが、これで終わりかととても寂しかったです。音響は梅芸より東急オーブのほうがいいと感じました。
今年最後を飾るにふさわしいコンサートで、ドイツには行けなかったけれど、日本で彼らの声を聴くことができて良かったです。
来年最初のミュージカルはヴァンパイアです。spaさん、来年もどうぞよろしくお願いします!では、良いお年を!
Märzさん、あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。
Frank&Friends、4回もいらしたのですね! 私は最初大阪だけと思っていたのですが、色々あって結局東京千秋楽も観に行ったので3回です。やはりドイツ語からミュージカルに入ったファンとしては、スケジュールぎっしりのSabrinaとThomasがこうして来日してくれて、ドイツ語で歌ってくれたことが本当に嬉しかったです。Thomasは芸歴も長いですし、ウィーンで多くの作品に出ているので、現地でご覧になった方も多いと思いますが、Sabrinaは一度来日しているとはいえ、初めての方も多かったと思うので、彼女の魅力が多くの人に伝わったことも嬉しい限りです。この熱気をどんどん次につなげていきたいものです! Sabrina出演のミュージカル、ご覧になる機会があるといいですね。"Kolpings Traum"は英語字幕付きDVDが20EUR程で入手出来るので、Sabrinaファンにはありがたいです。
今年の大阪はウィーン発の『ダンス・オブ・ヴァンパイア』からスタートしますね。私も初観劇は梅芸です。今年もお互い素敵な観劇体験をしていけるといいですね。また感想お待ちしております!
spaさん、あけましておめでとうございます。kenzoです。
2ステージ見たかったのですが断腸の思いで帰りました。。。
私もSabrinaとJackieのデュエットの"In His Eyes"は是非聴いてみたかったです。
チケットの件やCDの件、おっしゃるとおりです。こんな素敵な顔合わせなかなかヨーロッパでも少ないですものね。そんなスペシャルなのにCD等の物販は貧弱で残念でした。
今後は是非劇場側にも検討いただきたいものです。
今年もspaさんのブログを楽しみにしていま〜す!
kenzoさん、こちらこそ今年もよろしくお願いします。
F&Fではお目にかかれて嬉しかったです。次回は是非スケジュールをやりくりして、全公演制覇して下さい! SabrinaとJackieの二人、本当に息が合っていましたね。大阪公演でも一度通した後の夜公演の方が、もっと弾けてましたよ。
東京でのファンミーティングの模様もようやくアップできたので、是非ご覧下さい。
kenzoさんの観劇話もまた聞かせて下さいね。今度はSabrinaをドイツに追いかけるのは如何ですか? いつでもご相談に乗りますよ!